椿は翌日もその次の日も目を覚まさなかった。椿の心臓は動いているのに、椿の魂はここではないどこかの世界に行ってしまった。
いつまでも泣いてはいられない。毒々しい赤に染めていた髪をバリカンで坊主にした。もう虚勢はいらない。強さとはそういうことではないと知ったから。
「母さん、今日から復学するよ。今まで心配かけてごめんなさい」
久しぶりに制服を着て、母に頭を下げる。
「それと、お願いがあるんだ。これから母さんの言うこと、何でも聞くよ。だから」
何でも、なんて白紙の契約書にサインするようなものだ。でも、そこまでしてでも僕には叶えたい未来がある。
「医学部に行かせてください!」
母は僕のお願いを了承してくれた。しかし、勉強をさぼってきたツケは想像以上に重くのしかかった。問題集を解くたび心が折れそうになる。
くじけそうになった時、僕は卒園式の動画を見返している。画面の中では幼い椿が天真爛漫な笑顔で将来の夢を語っている。
「私の夢は魔法少女 です。ドラゴンになった陸と一緒に、魔法で困っている人を助けてあげたいです」
僕のバカげた夢を笑わないでくれたのは椿だけだった。僕はドラゴンにはなれなかったけれど、椿は麗の願いを叶える魔法の相棒に僕を選んでくれたのだ。あの日、椿は確かに魔法少女だった。
僕はドラゴンになりたい。世界中の悪い病気を殲滅する無敵の竜になりたい。僕が愛した魔法少女との約束を果たすために。君の笑顔にもう一度会うために。
いつまでも泣いてはいられない。毒々しい赤に染めていた髪をバリカンで坊主にした。もう虚勢はいらない。強さとはそういうことではないと知ったから。
「母さん、今日から復学するよ。今まで心配かけてごめんなさい」
久しぶりに制服を着て、母に頭を下げる。
「それと、お願いがあるんだ。これから母さんの言うこと、何でも聞くよ。だから」
何でも、なんて白紙の契約書にサインするようなものだ。でも、そこまでしてでも僕には叶えたい未来がある。
「医学部に行かせてください!」
母は僕のお願いを了承してくれた。しかし、勉強をさぼってきたツケは想像以上に重くのしかかった。問題集を解くたび心が折れそうになる。
くじけそうになった時、僕は卒園式の動画を見返している。画面の中では幼い椿が天真爛漫な笑顔で将来の夢を語っている。
「私の夢は魔法少女 です。ドラゴンになった陸と一緒に、魔法で困っている人を助けてあげたいです」
僕のバカげた夢を笑わないでくれたのは椿だけだった。僕はドラゴンにはなれなかったけれど、椿は麗の願いを叶える魔法の相棒に僕を選んでくれたのだ。あの日、椿は確かに魔法少女だった。
僕はドラゴンになりたい。世界中の悪い病気を殲滅する無敵の竜になりたい。僕が愛した魔法少女との約束を果たすために。君の笑顔にもう一度会うために。