あの後、父親と母親は麗のために“休戦”し、毎日欠かさず見舞いをするようになった。それは麗が目を醒まさなくなってからも続いている。最後に父親に会えたからか、大好きな両親がそばにいるからかはわからないが、麗はとても穏やかな顔で眠っているという。
僕たちがとった強硬手段は世間的には正しくなくても、結果としてこれでよかったのだと思う。
その後のいきさつについてはそう椿から聞いた。“銀行強盗”を完遂してもう打ち合わせの必要もなくなったが、椿は僕の部屋に入り浸っている。
「会いたいから会いに来てるんだけど、だめ?」
椿はそういたずらっぽく笑った。ダメなわけがない。むしろ嬉しい。嘘みたいに平穏な日常を椿と過ごせることがたまらなく嬉しい。思い出話に花を咲かせたり、僕たちの武勇伝を振り返ったり、とても幸せな時間だ。
「じゃあ、またね」
夕方になり椿が帰ろうとする。立ち上がった椿がよろめいて転びそうになるのを僕は抱きとめた。
「あぶねっ、大丈夫か?」
「うん、ありがと」
椿の顔が近い。綺麗だと思った。しかし、ドキドキする間もなかった。椿の膝の力が抜けたのか、椿は僕の手をすり抜けて床に崩れ落ちた。
「椿?」
椿はそのまま動かず、力なく笑った。
「あはは、タイムリミットかな。ごめんね、黙ってて」
僕たちがとった強硬手段は世間的には正しくなくても、結果としてこれでよかったのだと思う。
その後のいきさつについてはそう椿から聞いた。“銀行強盗”を完遂してもう打ち合わせの必要もなくなったが、椿は僕の部屋に入り浸っている。
「会いたいから会いに来てるんだけど、だめ?」
椿はそういたずらっぽく笑った。ダメなわけがない。むしろ嬉しい。嘘みたいに平穏な日常を椿と過ごせることがたまらなく嬉しい。思い出話に花を咲かせたり、僕たちの武勇伝を振り返ったり、とても幸せな時間だ。
「じゃあ、またね」
夕方になり椿が帰ろうとする。立ち上がった椿がよろめいて転びそうになるのを僕は抱きとめた。
「あぶねっ、大丈夫か?」
「うん、ありがと」
椿の顔が近い。綺麗だと思った。しかし、ドキドキする間もなかった。椿の膝の力が抜けたのか、椿は僕の手をすり抜けて床に崩れ落ちた。
「椿?」
椿はそのまま動かず、力なく笑った。
「あはは、タイムリミットかな。ごめんね、黙ってて」