〝公太子選〟が終わった翌日、いよいよ立太子の儀式が行われる日。
この儀式をもってイネス公女様は公太女としてこの国の後継者に収まるのだとか。
イネス公女様はテイラーメイドの作った豪華な衣装を身にまとい正式な護衛兵に守られて儀式に臨んでいます。
ほかの兄姉も全員が揃ってそれを見つめ、国民たちも祝福しています。
いまのところは異常がないようですが……このまま終わりますかね?
「以上をもってイネス = クエスタを次代の公王と定め公太女へ立太子するものとする。異議のあるものはいるか?」
「おお! ここにいるぞ!」
声を張り上げて登ってきたのは中年の男性。
全身を鎧に覆われた集団を引き連れて儀式場へと乗り込んできました。
「お前は……ジェイクか」
「ああ、そうだとも! サニの叔父ジェイクだ! 長子であるサニを差し置き少し前まで〝病気〟で寝込んでいたような出来損ないを立太子させようなど笑わせる! そのような小娘に国を任せられると思っているのか!」
「少なくともサニよりは確実に任せられる。いま各公子が行っていた公務の査察を行っているがサニの政務については嫌疑のあるものが多数出てきている。まだ証拠は固まっていないが、それだけの話。証拠固めが終われば横領額から考えて斬首刑が相当だな」
「それこそがサニを貶める詭弁だというのだ! いまこの場で国を惑わす愚王と魔女を討ち取り正義の名の下にサニを国の女王としようぞ!」
その言葉と同時に続々と鎧を着けた集団が儀式場に乗り込んで行き、公王陛下とイネス公女様を守る騎士との間で争いを始めました。
これはいけませんね。
僕たちの役目はイネス公女様の護衛、守りに入らねば。
そう考えて動こうとしたとき、僕とリンより素早く動いた影がありました。
あれは……リュウセイ?
「ウォフ!!」
「リュウセイ!」
「なんだ、野犬か!? そんなもの構わず愚王と魔女を……なんだ!?」
ジェイクという男が指示を出そうとしたところ、リュウセイの体が大きくなり人並みの背丈に。
それに伴い牙や爪も鋭く伸び、イネス公女様に襲いかかろうとしていた鎧の男を真っ二つにしました。
「な……魔犬か!?」
『あら、失礼ね? リュウセイはホーリーフェンリルよ?』
「ホーリーフェンリルだと? あの伝説にしか存在しない破邪の幻獣? ……いや、そんなことより、貴様は何者だ!? どこから現れた!?」
イネス公女様の横に立っていたのはメイヤです。
本当に自由になってきましたね。
『あなたのような愚か者に名乗る名前などないわ。ヒト族はやはり醜い者もいるのよね』
「なんだと!?」
『図星だからって怒らないでちょうだい。イネス、渡すのが少し早くなってしまったけれどこの杖を受け取りなさい』
メイヤがイネス公女様に渡したのは1本の長杖。
素材は間違いなくオリハルコン、装飾も非常に凝っていますしマインのお手製でしょう。
先端にはめられている紫の宝石はなんでしょうか?
『イネス。それを天に掲げなさい。そうすれば悪は滅びるわ』
「は、はい、メイヤ様」
イネス公女様が杖を両手で天に掲げるとそこから稲光がほとばしりました。
そして、儀式場に乱入していた鎧の一団を次々と打ち据え消えていきます。
「な、なんだ!? なんだこれは!?」
『愚か者に相応しい末路よ。私が制御していたからあなたには当たらなかったけれど……結果はわかったでしょう? それではさようなら』
メイヤがその言葉を告げると杖から一層激しい雷光が巻き起こり、ジェイクという男を弾き飛ばしました。
あの宝石、トルマリンが力を与えていますね?
『さて、邪魔者はいなくなったわ。シント、リン。あなた方も上がってきなさいな。せっかくだし〝里〟としてお祝いしてあげましょう?』
メイヤ、本当になにを考えているんですか?
こんな大勢の目の前でいきなり姿を現したり、確実に五大精霊が力を宿した道具を与えたりして。
呼ばれた以上、行かないわけにもいきませんが……いいのでしょうか?
『シント、リン。早くおいでなさい。イネスとは正式に〝里〟として契約を交わすから』
ますます意味がわかりません。
なにを企んでいるのか……。
ともかく儀式場に上がりましょう。
「来ましたよ、メイヤ」
「一体どうするのですか、メイヤ様。この状況は?」
『どうもしないわよ? あらためてこの国の後継者となるイネスにあいさつをしようと考えただけ。そうしたら邪魔者がいたから先にお祝いのひとつを渡してお掃除をさせただけよ』
「お掃除……そうだ、遅くなりました、イネス公女様」
「ごめんね、護衛なのに出遅れて」
イネス公女様も公王陛下も事態に付いていけず固まったままです。
いち早く我に返ったのは護衛を担当している騎士のひとりでした。
「これは……全員死んでいる?」
その声で我に返った公王陛下が騎士に次の指示を出しました。
「なに? ジェイクはどうなっている?」
「は、はい! ……ジェイク様も息がありません。お亡くなりになっているようです」
「なんだと? これは……?」
『当然でしょう、オリヴァー。私の住む神域の五大精霊たちが作った裁きの杖よ? 邪な心を持った者を生かしておくはずもないわ』
「は……しかし……」
『ごめんなさいね。私、ヒト族のしきたりには詳しくないの。不心得者を全員殺してしまったことは聖霊の流儀よ。許せとはいわないけれど理解してね?』
「あ、ああ、いえ。こちらこそ、危ないところを救っていただき……」
『感謝は受け取ったわ。それで、儀式の最中だったのでしょう? 私たちは端の方で見届けるから続けなさいな。私からのお祝いはそのあとに渡すから』
「は、はい。不心得者ジェイクによって中断されたが儀式を再開する! イネス = クエスタを次代の公王と定め公太女へ立太子に異議のあるものはいるか!?」
今度こそ異議を唱える者はなし。
いえ、正確には異議を唱えるための準備をしてきた集団が隠れていますが、イネス公女様の持つ杖を恐れてもう出てくることができなくなったようです。
滑稽な。
「それでは現時点をもってイネス = クエスタを公太女とする! イネス = クエスタ、皆にあいさつを」
「は、はい。私の初心は昨日の〝公太子選〟でも述べた通り皆さんへの支援と貴族の清浄化です。それ以外のことはこれから学んでいくこととなります。皆様、よろしくお願いいたします」
このあいさつで儀式は終了のようですが……国民たちも突然儀式場で行われた謎の出来事に放心していて反応がありません。
イネス公女様の兄姉もメイヤや僕とリンの正体を知っているプリメーラ公女様以外はあっけにとられたままです。
……なにをしにきたんですか、メイヤ?
『それではイネスが正式に次代の公王と決まったようだし私もあいさつをしましょう。私はここから遠く離れた場所にある神域、〝神樹の里〟の管理者、聖霊メイヤよ。シント、リン。あなた方も正体を隠さずにあいさつなさい』
「はあ、わかりました。僕は〝神樹の里〟契約者、シントです」
「同じく〝神樹の里〟守護者、リンよ。それで、メイヤ様。一体なにを?」
『ええ。私たち神域の関係者が〝正式に〟イネスと契約をすることを証明するために来たの』
「イネス公女……いえ、イネス公太女様との契約?」
『そうよ。私たち神域からの食料を支援する約束をこの場で明言しようと思って。さて、私も宣言をしましょうか』
そう言うとメイヤはイネス公太女様の横まで歩み寄り、国民たちに向けてよく響き渡る声で宣言し始めました。
『聞きなさい、人の子らよ。私は神樹の聖霊メイヤ。いまこの場にてイネス = クエスタに対して私の神域から食料となる作物を提供することを約束するわ。その量は人の子が食べる量にして1カ月当たり6000人分。ただし、この食料はイネス個人に渡すものであってクエスタという国に渡しているものではない。その配分はイネスにすべて任せます。ただし、私の神域の者たちは常にこの国とイネスを見張ることをお忘れなく。私の勘気に触れるような使い道をされた場合、それ以降の支援は行わない。イネスもわかったわね?』
「はい。承知の上です」
『よろしい。それでは私たちから次の公王に決まったあなたへの贈り物よ。その杖もそうだけど受け取りなさい』
メイヤが取り出したのはイヤリング、ネックレス、ブレスレット、指輪の4つのアクセサリー。
イヤリングからはウィンディの魔力、ネックレスからはマインの魔力、ブレスレットからはアクエリアの魔力、指輪からはヴォルケーノボムの魔力がそれぞれ感じ取れます。
みんな、はりきって作りましたね。
『それらはすべて私の神域にいる五大精霊たちがその力を封じ込めて作ったアクセサリーと杖よ。杖は邪心を持つ者を雷撃で滅ぼす効果があるわ。ほかのアクセサリーにもそれぞれいろいろな効果が宿してあるけれど……それはまたあとで説明しましょう』
「はい。過分なお恵みありがとうございます」
『気にしないで。あなたが気に入ったからこそ作ったものばかりなのだから。ただし、あなたが邪心を持てばあなた自身がその杖の雷撃で滅ぼされるわ。その覚悟もしておきなさい』
「かしこまりました。この心、決して濁らせはしません」
『結構。……さて、聞いての通りイネスは聖霊と約束を交わし五大精霊の加護も受け取ったわ。イネスやこの国のヒト族が心を濁らせない限り私の神域からの支援も約束し続けましょう。イネスの次の世代は……そのときの様子見ね?』
「承知いたしました。次の世代も必ずやメイヤ様のお眼鏡にかなう立派な後継者を育て上げてみせます」
『そうしてもらえると嬉しいわね。では、頑張りなさい』
言いたいことを言ってメイヤは姿を消しました。
国民たちは時が動き出したかのように大歓声をあげますが……これでよかったのでしょうか?
聖霊の気まぐれってよくわかりません。
この儀式をもってイネス公女様は公太女としてこの国の後継者に収まるのだとか。
イネス公女様はテイラーメイドの作った豪華な衣装を身にまとい正式な護衛兵に守られて儀式に臨んでいます。
ほかの兄姉も全員が揃ってそれを見つめ、国民たちも祝福しています。
いまのところは異常がないようですが……このまま終わりますかね?
「以上をもってイネス = クエスタを次代の公王と定め公太女へ立太子するものとする。異議のあるものはいるか?」
「おお! ここにいるぞ!」
声を張り上げて登ってきたのは中年の男性。
全身を鎧に覆われた集団を引き連れて儀式場へと乗り込んできました。
「お前は……ジェイクか」
「ああ、そうだとも! サニの叔父ジェイクだ! 長子であるサニを差し置き少し前まで〝病気〟で寝込んでいたような出来損ないを立太子させようなど笑わせる! そのような小娘に国を任せられると思っているのか!」
「少なくともサニよりは確実に任せられる。いま各公子が行っていた公務の査察を行っているがサニの政務については嫌疑のあるものが多数出てきている。まだ証拠は固まっていないが、それだけの話。証拠固めが終われば横領額から考えて斬首刑が相当だな」
「それこそがサニを貶める詭弁だというのだ! いまこの場で国を惑わす愚王と魔女を討ち取り正義の名の下にサニを国の女王としようぞ!」
その言葉と同時に続々と鎧を着けた集団が儀式場に乗り込んで行き、公王陛下とイネス公女様を守る騎士との間で争いを始めました。
これはいけませんね。
僕たちの役目はイネス公女様の護衛、守りに入らねば。
そう考えて動こうとしたとき、僕とリンより素早く動いた影がありました。
あれは……リュウセイ?
「ウォフ!!」
「リュウセイ!」
「なんだ、野犬か!? そんなもの構わず愚王と魔女を……なんだ!?」
ジェイクという男が指示を出そうとしたところ、リュウセイの体が大きくなり人並みの背丈に。
それに伴い牙や爪も鋭く伸び、イネス公女様に襲いかかろうとしていた鎧の男を真っ二つにしました。
「な……魔犬か!?」
『あら、失礼ね? リュウセイはホーリーフェンリルよ?』
「ホーリーフェンリルだと? あの伝説にしか存在しない破邪の幻獣? ……いや、そんなことより、貴様は何者だ!? どこから現れた!?」
イネス公女様の横に立っていたのはメイヤです。
本当に自由になってきましたね。
『あなたのような愚か者に名乗る名前などないわ。ヒト族はやはり醜い者もいるのよね』
「なんだと!?」
『図星だからって怒らないでちょうだい。イネス、渡すのが少し早くなってしまったけれどこの杖を受け取りなさい』
メイヤがイネス公女様に渡したのは1本の長杖。
素材は間違いなくオリハルコン、装飾も非常に凝っていますしマインのお手製でしょう。
先端にはめられている紫の宝石はなんでしょうか?
『イネス。それを天に掲げなさい。そうすれば悪は滅びるわ』
「は、はい、メイヤ様」
イネス公女様が杖を両手で天に掲げるとそこから稲光がほとばしりました。
そして、儀式場に乱入していた鎧の一団を次々と打ち据え消えていきます。
「な、なんだ!? なんだこれは!?」
『愚か者に相応しい末路よ。私が制御していたからあなたには当たらなかったけれど……結果はわかったでしょう? それではさようなら』
メイヤがその言葉を告げると杖から一層激しい雷光が巻き起こり、ジェイクという男を弾き飛ばしました。
あの宝石、トルマリンが力を与えていますね?
『さて、邪魔者はいなくなったわ。シント、リン。あなた方も上がってきなさいな。せっかくだし〝里〟としてお祝いしてあげましょう?』
メイヤ、本当になにを考えているんですか?
こんな大勢の目の前でいきなり姿を現したり、確実に五大精霊が力を宿した道具を与えたりして。
呼ばれた以上、行かないわけにもいきませんが……いいのでしょうか?
『シント、リン。早くおいでなさい。イネスとは正式に〝里〟として契約を交わすから』
ますます意味がわかりません。
なにを企んでいるのか……。
ともかく儀式場に上がりましょう。
「来ましたよ、メイヤ」
「一体どうするのですか、メイヤ様。この状況は?」
『どうもしないわよ? あらためてこの国の後継者となるイネスにあいさつをしようと考えただけ。そうしたら邪魔者がいたから先にお祝いのひとつを渡してお掃除をさせただけよ』
「お掃除……そうだ、遅くなりました、イネス公女様」
「ごめんね、護衛なのに出遅れて」
イネス公女様も公王陛下も事態に付いていけず固まったままです。
いち早く我に返ったのは護衛を担当している騎士のひとりでした。
「これは……全員死んでいる?」
その声で我に返った公王陛下が騎士に次の指示を出しました。
「なに? ジェイクはどうなっている?」
「は、はい! ……ジェイク様も息がありません。お亡くなりになっているようです」
「なんだと? これは……?」
『当然でしょう、オリヴァー。私の住む神域の五大精霊たちが作った裁きの杖よ? 邪な心を持った者を生かしておくはずもないわ』
「は……しかし……」
『ごめんなさいね。私、ヒト族のしきたりには詳しくないの。不心得者を全員殺してしまったことは聖霊の流儀よ。許せとはいわないけれど理解してね?』
「あ、ああ、いえ。こちらこそ、危ないところを救っていただき……」
『感謝は受け取ったわ。それで、儀式の最中だったのでしょう? 私たちは端の方で見届けるから続けなさいな。私からのお祝いはそのあとに渡すから』
「は、はい。不心得者ジェイクによって中断されたが儀式を再開する! イネス = クエスタを次代の公王と定め公太女へ立太子に異議のあるものはいるか!?」
今度こそ異議を唱える者はなし。
いえ、正確には異議を唱えるための準備をしてきた集団が隠れていますが、イネス公女様の持つ杖を恐れてもう出てくることができなくなったようです。
滑稽な。
「それでは現時点をもってイネス = クエスタを公太女とする! イネス = クエスタ、皆にあいさつを」
「は、はい。私の初心は昨日の〝公太子選〟でも述べた通り皆さんへの支援と貴族の清浄化です。それ以外のことはこれから学んでいくこととなります。皆様、よろしくお願いいたします」
このあいさつで儀式は終了のようですが……国民たちも突然儀式場で行われた謎の出来事に放心していて反応がありません。
イネス公女様の兄姉もメイヤや僕とリンの正体を知っているプリメーラ公女様以外はあっけにとられたままです。
……なにをしにきたんですか、メイヤ?
『それではイネスが正式に次代の公王と決まったようだし私もあいさつをしましょう。私はここから遠く離れた場所にある神域、〝神樹の里〟の管理者、聖霊メイヤよ。シント、リン。あなた方も正体を隠さずにあいさつなさい』
「はあ、わかりました。僕は〝神樹の里〟契約者、シントです」
「同じく〝神樹の里〟守護者、リンよ。それで、メイヤ様。一体なにを?」
『ええ。私たち神域の関係者が〝正式に〟イネスと契約をすることを証明するために来たの』
「イネス公女……いえ、イネス公太女様との契約?」
『そうよ。私たち神域からの食料を支援する約束をこの場で明言しようと思って。さて、私も宣言をしましょうか』
そう言うとメイヤはイネス公太女様の横まで歩み寄り、国民たちに向けてよく響き渡る声で宣言し始めました。
『聞きなさい、人の子らよ。私は神樹の聖霊メイヤ。いまこの場にてイネス = クエスタに対して私の神域から食料となる作物を提供することを約束するわ。その量は人の子が食べる量にして1カ月当たり6000人分。ただし、この食料はイネス個人に渡すものであってクエスタという国に渡しているものではない。その配分はイネスにすべて任せます。ただし、私の神域の者たちは常にこの国とイネスを見張ることをお忘れなく。私の勘気に触れるような使い道をされた場合、それ以降の支援は行わない。イネスもわかったわね?』
「はい。承知の上です」
『よろしい。それでは私たちから次の公王に決まったあなたへの贈り物よ。その杖もそうだけど受け取りなさい』
メイヤが取り出したのはイヤリング、ネックレス、ブレスレット、指輪の4つのアクセサリー。
イヤリングからはウィンディの魔力、ネックレスからはマインの魔力、ブレスレットからはアクエリアの魔力、指輪からはヴォルケーノボムの魔力がそれぞれ感じ取れます。
みんな、はりきって作りましたね。
『それらはすべて私の神域にいる五大精霊たちがその力を封じ込めて作ったアクセサリーと杖よ。杖は邪心を持つ者を雷撃で滅ぼす効果があるわ。ほかのアクセサリーにもそれぞれいろいろな効果が宿してあるけれど……それはまたあとで説明しましょう』
「はい。過分なお恵みありがとうございます」
『気にしないで。あなたが気に入ったからこそ作ったものばかりなのだから。ただし、あなたが邪心を持てばあなた自身がその杖の雷撃で滅ぼされるわ。その覚悟もしておきなさい』
「かしこまりました。この心、決して濁らせはしません」
『結構。……さて、聞いての通りイネスは聖霊と約束を交わし五大精霊の加護も受け取ったわ。イネスやこの国のヒト族が心を濁らせない限り私の神域からの支援も約束し続けましょう。イネスの次の世代は……そのときの様子見ね?』
「承知いたしました。次の世代も必ずやメイヤ様のお眼鏡にかなう立派な後継者を育て上げてみせます」
『そうしてもらえると嬉しいわね。では、頑張りなさい』
言いたいことを言ってメイヤは姿を消しました。
国民たちは時が動き出したかのように大歓声をあげますが……これでよかったのでしょうか?
聖霊の気まぐれってよくわかりません。