その日、確保できた冬服は人数分に届かなかったそうです。
そちらは各古着屋に発注して替えの分も含め各古着屋に均等となるよう発注したようでした。
利益が集中するのはよくないらしいですからね。
毛布は人数分確保できたため、明日受け取りにいきそのまま配るらしいです。
そしてそのとき僕たちも一緒に来るよう頼まれたのですが……困りましたね。
「え? シント様たちは今日中に帰らなければいけないのですか?」
イネス公女様には申し訳ないのですがその通りなんですよね。
「はい。元々、日帰りの約束でしたから」
「ごめんね。勝手に予定を変えるといろんな仲間に心配をかけちゃうの」
「結果は見届けてやりてえんだがよ……こればっかりは俺たちの一存じゃどうにもな……」
はい、シエロとシエルも待っていますし、もう夕暮れ時。
いい加減、街の外に出なければ飛び込んでくるかもしれません。
再三、念話で無事を伝えているのですが、やはりヒト族の街というのが不安なのでしょう。
「イネス、あまり無理を言わないように。シント様方もいろいろと都合が終わりなのですから」
「……わかりました。プリメーラお姉様」
事情を知っているプリメーラ公女様のおかげでことなきを得たようです。
あとは帰るだけ……。
「でも、また明日来ることができるようなら来てください! 街門のところに使いを出しておきます!」
「イネス……」
イネス公女様も諦めの悪い……いえ、自分だけでは心細いのかもしれません。
できるかどうかわかりませんが答えておきましょうか。
「来ることができるかどうかは本当にわかりませんよ?」
「うん。里長の判断になっちゃうから」
「俺は……許されるかなぁ? ただの職人で通してるから」
「でも、待っています! 皆さんに立派な姿を見てもらいたいんです!」
なるほど、自分も頑張ればできるところも見てほしいと。
帰ったらメイヤに相談ですね。
「本当に来られるかわかりませんからね?」
「だめだったら私たちの代わりにしっかりお仕事をしてよ?」
「頑張りな。今日一日しっかり仕事をしてみせたんだからよ」
「はい!」
元気になったイネス公女様に見送られ、ホテルを出て街の外へ。
透明化したあとはペガサスのシエロとシエルに乗って神樹の里まで戻りました。
既に日が落ちてますのでディーヴァとミンストレルは夕食を済ませ、家に戻っているようですね。
『お帰り。今日はなかなかの大冒険だったみたいね』
「そうなります。意外なところで人助けの旅になってしまいました」
「問題だったでしょうか、メイヤ様?」
「悪いつもりはなかったんだが……ヒト族を助けたことで幻獣様たちの反感を買ったりしねえか?」
『それなら心配ないわ。姿を消してあなた方を見ていたウィンディから逐次報告が来ていたもの。みんな〝ジニの者たちを助けることは許せないが他国の幼子まで憎むことはできない〟って意見で一致しているわよ。できることなら自分たちが助けに行ってあげていって言い出している者たちもいるわ』
「助けに行きたい?」
『シルキーやニンフたちよ。彼女たちは人型だし、完全な人間に化ける事だってできるわ。子供たちが苦しんでいると聞いてなにかできることはないかって私のところに聞きに来る程よ』
「それは……いいことなのでしょうか?」
『神域のことがばれるのはまずいけれど、そうでなければ可能な範囲で助けてあげてもいいのではないかしら? 明日もお呼ばれしているのでしょう? 私の分体……力と意識、姿だけを共有している分け身とニンフ、シルキーの代表者1名ずつを連れて行ってみなさい。それで、あの街の子供たちが本当に助ける価値があるのか見極めましょう』
「ありがとう、メイヤ」
「助かります、メイヤ様」
「俺も同行していいのでしょうか、メイヤ様?」
『ベニャトも来なさい。あなたがいた方が話は早そうだわ』
「では遠慮なく。あの街の孤児がどうなっているのか心配でよ」
『ジニの民には〝幻獣たちに手を出した愚かな国の末期〟として滅びてもらわなければいけないけれど、それ以外の国だったら問題ないはずよ。みんな受け入れているしね』
「では明朝、みんなを連れて出発ですね」
『そうしましょう。あなた方も夕食を済ませて温泉につかったら早く寝なさい』
「そうさせていただきます、メイヤ様」
翌日、メイヤと完全な人間に化けたシルキーとニンフの代表者を連れてフロレンシオに向かいます。
そこの門の前ではプリメーラ公女様とイネス公女様の護衛隊の装備に身を固めた方がおふたり待っていてくれました。
話が早く済みそうですね。
「おお、シント様方。本当に来てくれたのですね! 後ろの女性3名は?」
「シントが住む里の里長メイヤです」
今回はメイヤも人に化けるためいつもの脳に響き渡るような声ではなく普通の声で話しています。
同じようにシルキーやニンフも人の言葉で話しかけ、入街の許可を求めました。
「そうですか。シント様の里長様とそのお仲間が直々に……さすがに私たちの一存では決めかねますのでプリメーラ公女様とイネス公女様に確認を取って参ります。街の外でお待たせするのは申し訳ありませんが……」
「お気になさらず。私たちは田舎の里暮らしで立ち仕事にも慣れていますから」
「本当に申し訳ありません。すぐに戻って参ります。それでは」
護衛隊の方は馬に乗り、街の中へと駆け出していきました。
取り残された僕たちはというと……一緒についてきたエアリアルから報告を受けています。
『メイヤ様、契約者、守護者。プリメーラ公女という方とイネス公女という方はひとりの女性と一緒に毛布を荷馬車に積み回っております』
『へえ、こんな朝から。シントたちが見込んだだけあってしっかりとした権力者だわ』
『はい。ああ、門から来たと思われる人間が合流いたしました。その知らせを聞き、慌てて馬車の中へと戻って行きましたね。馬車は……そちらに向かっているようです』
『あら。仕事の邪魔をしてしまったかしら』
『かもしれません。もう少し遅く着いても大丈夫だったかと』
『着いてしまったものは仕方がないわ。失礼のないようにごあいさついたしましょう』
『メイヤ様がヒト族に詫びるのですか?』
『聖霊だって不手際があればヒト族に謝らなければならないのよ。それで、どのくらいで着きそう?』
『あと、2カ所ほど小道を曲がったところで大通りに入ります。豪華な馬車なのでそれで見分けがつくかと』
『わかったわ。エアリアルたちは引き続きフロレンシオの観察を続けてちょうだい。どんな街かを見定めるためにね』
『かしこまりました、メイヤ様』
エアリアルからの報告を受けて少し、確かにプリメーラ公女様とイネス公女様の馬車が大通りへと入ってきました。
そのまま街門までやってきて、僕たち一行の前で止まりふたりが降りてきます。
「お待たせいたしました。まさか、シント様の里長まで出向いてくださるだなんて……」
「正直驚きました。シント様、里長様はなぜ?」
「ああ、それは私の方から説明するわ。私は隠れ里の里長、メイヤ。昨日はシントたちがいろいろしたようだけど迷惑はかけなかった?」
「ご迷惑だなんて!」
「落ち着きなさい、イネス。ご迷惑など受けておりません。むしろ、こちらがお詫びと感謝をお伝えせねばならない立場でございます」
「そう。私はシントに渡してあった薬をシントの意思で使っただけだからお詫びを受ける理由も感謝される理由もないわ。それに、お金だって元を正せばベニャトの稼いだお金だから気にしていない。むしろ、そのお金で半日走り回せてしまったこちらが詫びるべきね。申し訳なかったわ」
「いえ、あのお金でたくさんの孤児が助かります!」
「ならいいのだけど。それで今日伺った用件なのだけれど、私たちも孤児院を訪れる際に同行して構わないかしら? 場合によっては隠れ里ではあるけれどいろいろ協力できるかも」
「よろしいのですか?」
「構わないですよ、イネス公女様。孤児たちが善良であるならば助けてあげたいのが私たちの願いです」
「……本当です。よろしくお願いいたします」
「ふふ。イネス公女様、そんな言葉を漏らしては自分が神眼持ちと言いふらして歩いているものですよ? 真実かどうかは心の内だけにとどめておきなさい」
「え!? あ、はい」
「では参りましょうか。ああ、でも私たち、全員歩きなのよね……」
「それでしたらご心配なく。いま、皆様の馬車もご用意させていただいています」
「助かるわ。準備ができたら出発しましょうね」
メイヤや妖精たちを連れての孤児院訪問。
子供たちってどのような感じなのでしょうか?
そちらは各古着屋に発注して替えの分も含め各古着屋に均等となるよう発注したようでした。
利益が集中するのはよくないらしいですからね。
毛布は人数分確保できたため、明日受け取りにいきそのまま配るらしいです。
そしてそのとき僕たちも一緒に来るよう頼まれたのですが……困りましたね。
「え? シント様たちは今日中に帰らなければいけないのですか?」
イネス公女様には申し訳ないのですがその通りなんですよね。
「はい。元々、日帰りの約束でしたから」
「ごめんね。勝手に予定を変えるといろんな仲間に心配をかけちゃうの」
「結果は見届けてやりてえんだがよ……こればっかりは俺たちの一存じゃどうにもな……」
はい、シエロとシエルも待っていますし、もう夕暮れ時。
いい加減、街の外に出なければ飛び込んでくるかもしれません。
再三、念話で無事を伝えているのですが、やはりヒト族の街というのが不安なのでしょう。
「イネス、あまり無理を言わないように。シント様方もいろいろと都合が終わりなのですから」
「……わかりました。プリメーラお姉様」
事情を知っているプリメーラ公女様のおかげでことなきを得たようです。
あとは帰るだけ……。
「でも、また明日来ることができるようなら来てください! 街門のところに使いを出しておきます!」
「イネス……」
イネス公女様も諦めの悪い……いえ、自分だけでは心細いのかもしれません。
できるかどうかわかりませんが答えておきましょうか。
「来ることができるかどうかは本当にわかりませんよ?」
「うん。里長の判断になっちゃうから」
「俺は……許されるかなぁ? ただの職人で通してるから」
「でも、待っています! 皆さんに立派な姿を見てもらいたいんです!」
なるほど、自分も頑張ればできるところも見てほしいと。
帰ったらメイヤに相談ですね。
「本当に来られるかわかりませんからね?」
「だめだったら私たちの代わりにしっかりお仕事をしてよ?」
「頑張りな。今日一日しっかり仕事をしてみせたんだからよ」
「はい!」
元気になったイネス公女様に見送られ、ホテルを出て街の外へ。
透明化したあとはペガサスのシエロとシエルに乗って神樹の里まで戻りました。
既に日が落ちてますのでディーヴァとミンストレルは夕食を済ませ、家に戻っているようですね。
『お帰り。今日はなかなかの大冒険だったみたいね』
「そうなります。意外なところで人助けの旅になってしまいました」
「問題だったでしょうか、メイヤ様?」
「悪いつもりはなかったんだが……ヒト族を助けたことで幻獣様たちの反感を買ったりしねえか?」
『それなら心配ないわ。姿を消してあなた方を見ていたウィンディから逐次報告が来ていたもの。みんな〝ジニの者たちを助けることは許せないが他国の幼子まで憎むことはできない〟って意見で一致しているわよ。できることなら自分たちが助けに行ってあげていって言い出している者たちもいるわ』
「助けに行きたい?」
『シルキーやニンフたちよ。彼女たちは人型だし、完全な人間に化ける事だってできるわ。子供たちが苦しんでいると聞いてなにかできることはないかって私のところに聞きに来る程よ』
「それは……いいことなのでしょうか?」
『神域のことがばれるのはまずいけれど、そうでなければ可能な範囲で助けてあげてもいいのではないかしら? 明日もお呼ばれしているのでしょう? 私の分体……力と意識、姿だけを共有している分け身とニンフ、シルキーの代表者1名ずつを連れて行ってみなさい。それで、あの街の子供たちが本当に助ける価値があるのか見極めましょう』
「ありがとう、メイヤ」
「助かります、メイヤ様」
「俺も同行していいのでしょうか、メイヤ様?」
『ベニャトも来なさい。あなたがいた方が話は早そうだわ』
「では遠慮なく。あの街の孤児がどうなっているのか心配でよ」
『ジニの民には〝幻獣たちに手を出した愚かな国の末期〟として滅びてもらわなければいけないけれど、それ以外の国だったら問題ないはずよ。みんな受け入れているしね』
「では明朝、みんなを連れて出発ですね」
『そうしましょう。あなた方も夕食を済ませて温泉につかったら早く寝なさい』
「そうさせていただきます、メイヤ様」
翌日、メイヤと完全な人間に化けたシルキーとニンフの代表者を連れてフロレンシオに向かいます。
そこの門の前ではプリメーラ公女様とイネス公女様の護衛隊の装備に身を固めた方がおふたり待っていてくれました。
話が早く済みそうですね。
「おお、シント様方。本当に来てくれたのですね! 後ろの女性3名は?」
「シントが住む里の里長メイヤです」
今回はメイヤも人に化けるためいつもの脳に響き渡るような声ではなく普通の声で話しています。
同じようにシルキーやニンフも人の言葉で話しかけ、入街の許可を求めました。
「そうですか。シント様の里長様とそのお仲間が直々に……さすがに私たちの一存では決めかねますのでプリメーラ公女様とイネス公女様に確認を取って参ります。街の外でお待たせするのは申し訳ありませんが……」
「お気になさらず。私たちは田舎の里暮らしで立ち仕事にも慣れていますから」
「本当に申し訳ありません。すぐに戻って参ります。それでは」
護衛隊の方は馬に乗り、街の中へと駆け出していきました。
取り残された僕たちはというと……一緒についてきたエアリアルから報告を受けています。
『メイヤ様、契約者、守護者。プリメーラ公女という方とイネス公女という方はひとりの女性と一緒に毛布を荷馬車に積み回っております』
『へえ、こんな朝から。シントたちが見込んだだけあってしっかりとした権力者だわ』
『はい。ああ、門から来たと思われる人間が合流いたしました。その知らせを聞き、慌てて馬車の中へと戻って行きましたね。馬車は……そちらに向かっているようです』
『あら。仕事の邪魔をしてしまったかしら』
『かもしれません。もう少し遅く着いても大丈夫だったかと』
『着いてしまったものは仕方がないわ。失礼のないようにごあいさついたしましょう』
『メイヤ様がヒト族に詫びるのですか?』
『聖霊だって不手際があればヒト族に謝らなければならないのよ。それで、どのくらいで着きそう?』
『あと、2カ所ほど小道を曲がったところで大通りに入ります。豪華な馬車なのでそれで見分けがつくかと』
『わかったわ。エアリアルたちは引き続きフロレンシオの観察を続けてちょうだい。どんな街かを見定めるためにね』
『かしこまりました、メイヤ様』
エアリアルからの報告を受けて少し、確かにプリメーラ公女様とイネス公女様の馬車が大通りへと入ってきました。
そのまま街門までやってきて、僕たち一行の前で止まりふたりが降りてきます。
「お待たせいたしました。まさか、シント様の里長まで出向いてくださるだなんて……」
「正直驚きました。シント様、里長様はなぜ?」
「ああ、それは私の方から説明するわ。私は隠れ里の里長、メイヤ。昨日はシントたちがいろいろしたようだけど迷惑はかけなかった?」
「ご迷惑だなんて!」
「落ち着きなさい、イネス。ご迷惑など受けておりません。むしろ、こちらがお詫びと感謝をお伝えせねばならない立場でございます」
「そう。私はシントに渡してあった薬をシントの意思で使っただけだからお詫びを受ける理由も感謝される理由もないわ。それに、お金だって元を正せばベニャトの稼いだお金だから気にしていない。むしろ、そのお金で半日走り回せてしまったこちらが詫びるべきね。申し訳なかったわ」
「いえ、あのお金でたくさんの孤児が助かります!」
「ならいいのだけど。それで今日伺った用件なのだけれど、私たちも孤児院を訪れる際に同行して構わないかしら? 場合によっては隠れ里ではあるけれどいろいろ協力できるかも」
「よろしいのですか?」
「構わないですよ、イネス公女様。孤児たちが善良であるならば助けてあげたいのが私たちの願いです」
「……本当です。よろしくお願いいたします」
「ふふ。イネス公女様、そんな言葉を漏らしては自分が神眼持ちと言いふらして歩いているものですよ? 真実かどうかは心の内だけにとどめておきなさい」
「え!? あ、はい」
「では参りましょうか。ああ、でも私たち、全員歩きなのよね……」
「それでしたらご心配なく。いま、皆様の馬車もご用意させていただいています」
「助かるわ。準備ができたら出発しましょうね」
メイヤや妖精たちを連れての孤児院訪問。
子供たちってどのような感じなのでしょうか?