さて、約束の2日が過ぎてアクエリアたちの湖の様子を見に行きましたが……落ち込んでいると言うことはだめでしたか。
『……契約者と守護者、どうすればいいのでしょう』
「念のために聞きます。だめだったんですね?」
『はい。湖も池もだめでした。池の方がより長く留まってくれるのですが、それでも帰っていってしまいます』
「あの、失礼ながら、アクエリア様。私たちにも限界が……」
『承知の上でお願いしております。なにか知恵はありませんか?』
知恵と言われましても……。
うーん……。
「念のために聞きたいのですが、アクエリアが前に住んでいたという湖? 泉? は魚がいたんですよね?」
『はい。たくさんおりました。〝王都〟の人間どもがヒュドラの毒を流し込んだので全滅したでしょうが……』
「その湖ってここより綺麗でしたか?」
『私の暮らす湖です。ほぼ同じ水質と純度を保っております』
「じゃあ、濁っていたとかそういうこともないんですね?」
『もちろんです。湖に人間たちが流してきた汚れが入り込んできたら、その都度浄化していました』
「うーん、そうなってくると本当に浮かんでくるアイディアがないのですが……」
『そうですか……守護者は?』
「私は逃げ回るときの汚れを泉や池で落とし水を汚したり魚を捕まえて食料にしたりする側でしたから……」
『……残念です。海はあんなに豊かな生態系を保つことができているのに、湖は魚1匹住み着かないのでしょう?』
「いや、僕たちに聞かれても……」
「水のことはアクエリア様が専門ですよね?」
『そうなのですが……』
アクエリアにアイディアがないのでは僕たちに浮かぶアイディアなんてありませんよ?
それにしても海ですか。
あちらはなぜあんなにも魚がいるのでしょうか?
『弱りました。本当にいい案が思いつかない……』
「僕たちはもっとですからね?」
「水の生き物のことは専門外ですよ?」
『ですよね。湖にいる精霊や妖精たちにも話は聞いているのです。でも、みんな理由がわからないと言うばかりで……』
「それは仕方がないのでは?」
「五大精霊のアクエリア様でわからないことを解決できるのでしたら、誰かが教えてくださいますよ」
『そうですよね……』
さて、本当に困ったものです。
どうして湖に魚が1匹も住んでくれないのでしょう?
普通なら1匹2匹住んでくれてもいいような……。
この里にだって幻獣や精霊、妖精たちがたくさん集まっていますし、移住希望者はたくさんいるそうですし。
本当に訳がわかりません。
そう考えていくと、生き物に必要なものが足りないとかそういうことでしょうか?
幻獣とかは究極的には大気中の魔力だけでも生きていける種族も多いそうですし。
僕やリンだってメイヤと出会う前は食べ物や飲み物に苦労していました。
そう考えていくと、詳しい知識を持っていそうなのは……また海の皆さんですね……。
「アクエリア、海エリアに行きましょう」
『海に、ですか?』
「水に関わることで湖関係の精霊たちがだめなら海の幻獣や精霊たちでしょう。ほら、早く行きますよ」
『はい。それでなにかわかるのでしたら』
アクエリアを伴いまた海エリアへ。
そこでは順番待ちの方々がまた昆布をガジガジ梶って楽しんでおり、整理役のマーマンさんがいてくれました。
誰かを呼ぶ必要がなくて助かります。
『ようこそ、契約者様、守護者様、ウンディーネ様。また来られたと言うことは……』
「はい。川を造っただけではだめでした」
「それで、魚がたくさん住んでいる海に詳しそうなあなた方に話を伺えればと」
『なんでも構いません。教えていただけますか?』
これにはマーマンさんも困り顔です。
さすがに言い知恵は浮かばないのでしょう。
『うーん、困りましたね。私たちも海藻類や貝を運んではきましたが、魚たちは呼び込んでいないのですよ。ただ、世界各地の海に繋がっているゲートを作っただけで』
『やっていることは私たちの湖と同じですか……』
『そのようですね。入場予定者が全員帰ったあとでしたら海族館をもう一度ご案内いたしますがいかがなさいますか?』
『そうしていただけますか? 私たち湖の精霊や妖精だけではどうしても答えがわからず……』
『かしこまりました。それではまた後ほどお越しください』
『そうさせていただきます』
そのあと、僕とリンは昼食を食べ適当に時間を潰してからアクエリアを誘って再び海エリアにある海族館へ。
この時間になるともう入場者はすべて帰ったあとですからね。
『お待ちしておりました。契約者様、守護者様、ウンディーネ様』
「お手数をおかけいたします。マーメイド」
「前回の案内だけで解決だったらよかったんだけどね……」
『申し訳ありません。もう一度ご案内をお願いいたします』
『いえ、気にしておりません。こちらへどうぞ』
マーメイドには再び海族館の中を案内してもらいました。
いつ来ても綺麗ですね、海族館は。
それにしても海だけはどうしてこんなに賑やかなのでしょう?
「マーメイド、マーマンにもした質問を繰り返すようで悪いのですが、世界各地の海とゲートを繋いだ以外特になにもしていないんですよね?」
『はい。海藻類や各種貝、海底にはりついて暮らす生物は持ち込みました。あと珊瑚も根付かせたりしましたがそれくらいです。あとは自然と住み着きましたね』
「そうですか。ところで、魚ってなにを食べて生きているんですか? 大きな魚はそれよりも小さな魚を食べていると聞きました。小魚の類いはプランクトンというものを食べているんですよね? それらはどうやって?」
『それらも自然と外界か流れ込んできました。それ以上に海藻やプランクトンがいなければ海の生物が住み着けませんから』
「そうなんですか?」
『契約者様はご存じない言葉かもしれませんが自然の生物は皆、〝食物連鎖〟というつながりを持って生きております。より小さな生物を大きな生物が食べていき、大きな生物が死んだあとの死骸は小さな生物の栄養源とされ分解される。そういう仕組みです』
「なるほど。プランクトンがいないと小魚たちの食事ができないと」
『はい。あとは……水の中に空気が足りなくなります』
「水の中って空気があるの?」
『ありますよ、守護者様。ただ、水の中にあるため鼻から吸うことはできません。〝エラ呼吸〟と申しまして、吸い込んだ水の中から必要なものだけを取り出す仕組みがあるんです』
「そうなんですね。僕たちには知らないことばかりです」
「本当に。私たちって本当に田舎者なんだよね」
『知らないことはこれから覚えていけばよろしいのですよ、契約者様も守護者様も』
「ありがとう、マーメイド。……そう言えばアクエリアが先ほどから黙っていますね?」
「本当だ。どうなさいましたか、アクエリア様?」
『……私たちの作ったゲート。〝魚〟は通れますが〝プランクトン〟は通れません』
「……アクエリア」
「あの、それでは食事ができませんよ?」
『それに、水中にも植物がないので呼吸ができないはずです』
「……」
「……アクエリア様、それでは魚もなにも住めません」
『申し訳ありません。至急、メイヤ様の元に向かい植物性プランクトンと水中に生える草を用意していただきます! それではまた!』
アクエリアはそれだけ言い残して行ってしまいました。
そうですか、そもそも魚が生きることができない環境でしたか。
それは1匹たりとも住み着きませんよね……。
『……契約者と守護者、どうすればいいのでしょう』
「念のために聞きます。だめだったんですね?」
『はい。湖も池もだめでした。池の方がより長く留まってくれるのですが、それでも帰っていってしまいます』
「あの、失礼ながら、アクエリア様。私たちにも限界が……」
『承知の上でお願いしております。なにか知恵はありませんか?』
知恵と言われましても……。
うーん……。
「念のために聞きたいのですが、アクエリアが前に住んでいたという湖? 泉? は魚がいたんですよね?」
『はい。たくさんおりました。〝王都〟の人間どもがヒュドラの毒を流し込んだので全滅したでしょうが……』
「その湖ってここより綺麗でしたか?」
『私の暮らす湖です。ほぼ同じ水質と純度を保っております』
「じゃあ、濁っていたとかそういうこともないんですね?」
『もちろんです。湖に人間たちが流してきた汚れが入り込んできたら、その都度浄化していました』
「うーん、そうなってくると本当に浮かんでくるアイディアがないのですが……」
『そうですか……守護者は?』
「私は逃げ回るときの汚れを泉や池で落とし水を汚したり魚を捕まえて食料にしたりする側でしたから……」
『……残念です。海はあんなに豊かな生態系を保つことができているのに、湖は魚1匹住み着かないのでしょう?』
「いや、僕たちに聞かれても……」
「水のことはアクエリア様が専門ですよね?」
『そうなのですが……』
アクエリアにアイディアがないのでは僕たちに浮かぶアイディアなんてありませんよ?
それにしても海ですか。
あちらはなぜあんなにも魚がいるのでしょうか?
『弱りました。本当にいい案が思いつかない……』
「僕たちはもっとですからね?」
「水の生き物のことは専門外ですよ?」
『ですよね。湖にいる精霊や妖精たちにも話は聞いているのです。でも、みんな理由がわからないと言うばかりで……』
「それは仕方がないのでは?」
「五大精霊のアクエリア様でわからないことを解決できるのでしたら、誰かが教えてくださいますよ」
『そうですよね……』
さて、本当に困ったものです。
どうして湖に魚が1匹も住んでくれないのでしょう?
普通なら1匹2匹住んでくれてもいいような……。
この里にだって幻獣や精霊、妖精たちがたくさん集まっていますし、移住希望者はたくさんいるそうですし。
本当に訳がわかりません。
そう考えていくと、生き物に必要なものが足りないとかそういうことでしょうか?
幻獣とかは究極的には大気中の魔力だけでも生きていける種族も多いそうですし。
僕やリンだってメイヤと出会う前は食べ物や飲み物に苦労していました。
そう考えていくと、詳しい知識を持っていそうなのは……また海の皆さんですね……。
「アクエリア、海エリアに行きましょう」
『海に、ですか?』
「水に関わることで湖関係の精霊たちがだめなら海の幻獣や精霊たちでしょう。ほら、早く行きますよ」
『はい。それでなにかわかるのでしたら』
アクエリアを伴いまた海エリアへ。
そこでは順番待ちの方々がまた昆布をガジガジ梶って楽しんでおり、整理役のマーマンさんがいてくれました。
誰かを呼ぶ必要がなくて助かります。
『ようこそ、契約者様、守護者様、ウンディーネ様。また来られたと言うことは……』
「はい。川を造っただけではだめでした」
「それで、魚がたくさん住んでいる海に詳しそうなあなた方に話を伺えればと」
『なんでも構いません。教えていただけますか?』
これにはマーマンさんも困り顔です。
さすがに言い知恵は浮かばないのでしょう。
『うーん、困りましたね。私たちも海藻類や貝を運んではきましたが、魚たちは呼び込んでいないのですよ。ただ、世界各地の海に繋がっているゲートを作っただけで』
『やっていることは私たちの湖と同じですか……』
『そのようですね。入場予定者が全員帰ったあとでしたら海族館をもう一度ご案内いたしますがいかがなさいますか?』
『そうしていただけますか? 私たち湖の精霊や妖精だけではどうしても答えがわからず……』
『かしこまりました。それではまた後ほどお越しください』
『そうさせていただきます』
そのあと、僕とリンは昼食を食べ適当に時間を潰してからアクエリアを誘って再び海エリアにある海族館へ。
この時間になるともう入場者はすべて帰ったあとですからね。
『お待ちしておりました。契約者様、守護者様、ウンディーネ様』
「お手数をおかけいたします。マーメイド」
「前回の案内だけで解決だったらよかったんだけどね……」
『申し訳ありません。もう一度ご案内をお願いいたします』
『いえ、気にしておりません。こちらへどうぞ』
マーメイドには再び海族館の中を案内してもらいました。
いつ来ても綺麗ですね、海族館は。
それにしても海だけはどうしてこんなに賑やかなのでしょう?
「マーメイド、マーマンにもした質問を繰り返すようで悪いのですが、世界各地の海とゲートを繋いだ以外特になにもしていないんですよね?」
『はい。海藻類や各種貝、海底にはりついて暮らす生物は持ち込みました。あと珊瑚も根付かせたりしましたがそれくらいです。あとは自然と住み着きましたね』
「そうですか。ところで、魚ってなにを食べて生きているんですか? 大きな魚はそれよりも小さな魚を食べていると聞きました。小魚の類いはプランクトンというものを食べているんですよね? それらはどうやって?」
『それらも自然と外界か流れ込んできました。それ以上に海藻やプランクトンがいなければ海の生物が住み着けませんから』
「そうなんですか?」
『契約者様はご存じない言葉かもしれませんが自然の生物は皆、〝食物連鎖〟というつながりを持って生きております。より小さな生物を大きな生物が食べていき、大きな生物が死んだあとの死骸は小さな生物の栄養源とされ分解される。そういう仕組みです』
「なるほど。プランクトンがいないと小魚たちの食事ができないと」
『はい。あとは……水の中に空気が足りなくなります』
「水の中って空気があるの?」
『ありますよ、守護者様。ただ、水の中にあるため鼻から吸うことはできません。〝エラ呼吸〟と申しまして、吸い込んだ水の中から必要なものだけを取り出す仕組みがあるんです』
「そうなんですね。僕たちには知らないことばかりです」
「本当に。私たちって本当に田舎者なんだよね」
『知らないことはこれから覚えていけばよろしいのですよ、契約者様も守護者様も』
「ありがとう、マーメイド。……そう言えばアクエリアが先ほどから黙っていますね?」
「本当だ。どうなさいましたか、アクエリア様?」
『……私たちの作ったゲート。〝魚〟は通れますが〝プランクトン〟は通れません』
「……アクエリア」
「あの、それでは食事ができませんよ?」
『それに、水中にも植物がないので呼吸ができないはずです』
「……」
「……アクエリア様、それでは魚もなにも住めません」
『申し訳ありません。至急、メイヤ様の元に向かい植物性プランクトンと水中に生える草を用意していただきます! それではまた!』
アクエリアはそれだけ言い残して行ってしまいました。
そうですか、そもそも魚が生きることができない環境でしたか。
それは1匹たりとも住み着きませんよね……。