結局、海の生態系を見に行っても収穫はゼロ。
アクエリアがうらやましがって終わるだけの結果になりました。
あとで、案内してくれたマーメイドさんにはしっかり謝っておきましたが……。
さて、そうなってくるとどこが悪いのか。
とりあえず、今日もメイヤの元で朝食です。
『……その様子だと相当な難問のようね』
「難問なんて問題じゃありません」
「マーメイドたちに頼んで海の中も見せていただきましたが、なんの解決策も見つからず……」
『困ったわ。私も神樹の聖霊だから水の中までは管轄外なのよ。水が管理領域のはずである水の五大精霊ウンディーネさえわからない難問など、私になんとかできる問題じゃないわ』
「ですよね……」
「困りました……」
となりからディーヴァとミンストレルも不安そうにのぞき込んできますが、ふたりも水辺のことは知らないのでいい案がなく、どうしようもありません。
仕方がないので今日も湖エリアへと向かいますが……どうにかなるでしょうか?
朝食後に湖エリアに行くとアクエリアがなにか考えごとをしているような顔で待っていました。
『アクエリア、なにか思いつきましたか?』
「ああ、契約者。昨日、海の中を見てきましたが、海の水は常に変わり続けているじゃないですか。それが原因なのではないかと」
「水が変わり続けている、ですか? アクエリア様?」
『はい。私たちの湖では水の出口、つまり〝川〟が一切なかったので水がたまったままの状態を保ち続けています。それに川を作れば淡水系の魚たちもやってくるのではないかと』
「なるほど。ですが、川とはそんな簡単にできるのですか?」
『……イメージを送りますので創造魔法でお願いいたします』
「構いませんが……川とはどこに流れ着くのでしょう?」
『山の中に染みこむ場合もありますが、基本的には海へと流れ出します』
「それ、先にマーメイドさんたちの許可がいりますね」
『……ですよね』
「五大精霊だからって勝手になんでもやろうとしない。ここは幻獣や精霊、妖精たちが共生する場所です。一部の力が強いものが横暴な真似をし出すとメイヤが排除しますよ?」
『……メイヤ様には私たちでもかないません』
「なら、何事もまず相談して許可を得てからです。海エリアに行きますよ」
まったく、アクエリアも焦っているのか物ごとを急いで進めようとしすぎです。
とりあえず、アクエリアを伴い海エリア、海族館前にやってきましたが、そこには順番待ちの住民たちが集まってなにかを食べていました。
緑色の海藻みたいですがあれは?
『おや、契約者様と守護者様。それにウンディーネ様も。今日はなんのご用ですか?』
「マーマン。いえ、アクエリアが川を作りたいと言い出したものですから来たのですが……あの幻獣などが食べている緑色の草みたいなものは?」
『ああ、海藻の昆布です。切り取って天日干しするとああなります。かみ応えがあり適度に塩分が乗っていて独特の風味もありますから時間待ちにと提供してみたら好評でして』
「それって今後も提供できるだけの量があるのですか?」
『……メイヤ様のお力で海藻も大量に増えていきますから』
「……申し訳ありません」
『契約者様はお気になさらず。それで、ウンディーネ様は川を作りたいのでしたね』
『はい。川を作るにあたり、どこか海と繋がってもいい場所を教えていただきたく』
『なるほど。それでしたら、あの崖の上にはつなげられますか?』
「崖の上?」
マーマンが指さした方向には海の上にある少しだけ高い崖がありました。
崖の上に川をつなげるとは一体?
『なるほど。滝を作るのですね?』
『はい、ウンディーネ様。来場者には変わったものを見せて差し上げたいので』
「あの、〝滝〟ってなんでしょうか?」
『契約者様はご存じありませんか。と言うことは守護者様も?』
「申し訳ありません、不勉強で」
『いえいえ、おふたりの境遇は里にいる幻獣や精霊、妖精たちみんなが知っていることです。不勉強だなんて感じませんよ。〝滝〟と言うのは簡単に言うと水が高い場所から低い場所に落ちる場所のことです。それも流れ落ちるというような緩やかなものではなく、本当に落下するほどの急な勢いで』
「それは確かに変わったものでしょうね」
「私も楽しみです」
『滝の周りでは水も飛び散ります。場合によっては〝虹〟も見えるかもしれません』
『〝虹〟とは光が水などに当たって様々な色に分解されたものを指します。いつでも見ることができるかはわかりませんが、条件が揃えば見ることもできるでしょう。神樹の里は常春で雨が降ることもありませんからね』
そう言えば、雨が降っている様子を確認したこともこの1年以上ありませんでしたね。
気温や天候管理はすべてメイヤがやっているはずなので、僕らが暮らしやすいようにしてくれているのでしょう。
でも、そうなると、水を飲まなければいけない住民たちはどうしているのか?
これもメイヤに確認しなくちゃいけませんね。
「マーマン、アクエリア、説明ありがとうございます。それで、川を作るのは問題ないのでしょうか?」
『構いませんよ。ただ、あまりにもたくさんの水が流れ込まれても困りますが……』
『そこは私の方で調整いたしますよ、マーマン。川を作る許可をいただきありがとうございます』
『この程度でしたらお安いご用です。……それにしても淡水の魚たちが住み着きませんか。困ったものですね』
『……はい。〝王都〟との戦いの最中は気に留めておりませんでしたが、平和になってしまうとどうしても気になって』
『心中お察しいたします。私どもの海では、〝決戦〟前から様々な生き物が住み着いていましたので……』
『……うらやましい』
「はいはい、アクエリア。うらやましがっても始まりません。湖に戻りますよ」
「そういたしましょう。マーマン、ありがとうございました」
『いえ。契約者様と守護者様もまた遊びに来てください』
とりあえず、またマーマンを威嚇し始める前にアクエリアを引っ張って湖エリアへ帰りましょう。
まったく、海の環境がうらやましいからってマーメイドやマーマンに嫉妬しても意味がないでしょうに。
アクエリアがうらやましがって終わるだけの結果になりました。
あとで、案内してくれたマーメイドさんにはしっかり謝っておきましたが……。
さて、そうなってくるとどこが悪いのか。
とりあえず、今日もメイヤの元で朝食です。
『……その様子だと相当な難問のようね』
「難問なんて問題じゃありません」
「マーメイドたちに頼んで海の中も見せていただきましたが、なんの解決策も見つからず……」
『困ったわ。私も神樹の聖霊だから水の中までは管轄外なのよ。水が管理領域のはずである水の五大精霊ウンディーネさえわからない難問など、私になんとかできる問題じゃないわ』
「ですよね……」
「困りました……」
となりからディーヴァとミンストレルも不安そうにのぞき込んできますが、ふたりも水辺のことは知らないのでいい案がなく、どうしようもありません。
仕方がないので今日も湖エリアへと向かいますが……どうにかなるでしょうか?
朝食後に湖エリアに行くとアクエリアがなにか考えごとをしているような顔で待っていました。
『アクエリア、なにか思いつきましたか?』
「ああ、契約者。昨日、海の中を見てきましたが、海の水は常に変わり続けているじゃないですか。それが原因なのではないかと」
「水が変わり続けている、ですか? アクエリア様?」
『はい。私たちの湖では水の出口、つまり〝川〟が一切なかったので水がたまったままの状態を保ち続けています。それに川を作れば淡水系の魚たちもやってくるのではないかと』
「なるほど。ですが、川とはそんな簡単にできるのですか?」
『……イメージを送りますので創造魔法でお願いいたします』
「構いませんが……川とはどこに流れ着くのでしょう?」
『山の中に染みこむ場合もありますが、基本的には海へと流れ出します』
「それ、先にマーメイドさんたちの許可がいりますね」
『……ですよね』
「五大精霊だからって勝手になんでもやろうとしない。ここは幻獣や精霊、妖精たちが共生する場所です。一部の力が強いものが横暴な真似をし出すとメイヤが排除しますよ?」
『……メイヤ様には私たちでもかないません』
「なら、何事もまず相談して許可を得てからです。海エリアに行きますよ」
まったく、アクエリアも焦っているのか物ごとを急いで進めようとしすぎです。
とりあえず、アクエリアを伴い海エリア、海族館前にやってきましたが、そこには順番待ちの住民たちが集まってなにかを食べていました。
緑色の海藻みたいですがあれは?
『おや、契約者様と守護者様。それにウンディーネ様も。今日はなんのご用ですか?』
「マーマン。いえ、アクエリアが川を作りたいと言い出したものですから来たのですが……あの幻獣などが食べている緑色の草みたいなものは?」
『ああ、海藻の昆布です。切り取って天日干しするとああなります。かみ応えがあり適度に塩分が乗っていて独特の風味もありますから時間待ちにと提供してみたら好評でして』
「それって今後も提供できるだけの量があるのですか?」
『……メイヤ様のお力で海藻も大量に増えていきますから』
「……申し訳ありません」
『契約者様はお気になさらず。それで、ウンディーネ様は川を作りたいのでしたね』
『はい。川を作るにあたり、どこか海と繋がってもいい場所を教えていただきたく』
『なるほど。それでしたら、あの崖の上にはつなげられますか?』
「崖の上?」
マーマンが指さした方向には海の上にある少しだけ高い崖がありました。
崖の上に川をつなげるとは一体?
『なるほど。滝を作るのですね?』
『はい、ウンディーネ様。来場者には変わったものを見せて差し上げたいので』
「あの、〝滝〟ってなんでしょうか?」
『契約者様はご存じありませんか。と言うことは守護者様も?』
「申し訳ありません、不勉強で」
『いえいえ、おふたりの境遇は里にいる幻獣や精霊、妖精たちみんなが知っていることです。不勉強だなんて感じませんよ。〝滝〟と言うのは簡単に言うと水が高い場所から低い場所に落ちる場所のことです。それも流れ落ちるというような緩やかなものではなく、本当に落下するほどの急な勢いで』
「それは確かに変わったものでしょうね」
「私も楽しみです」
『滝の周りでは水も飛び散ります。場合によっては〝虹〟も見えるかもしれません』
『〝虹〟とは光が水などに当たって様々な色に分解されたものを指します。いつでも見ることができるかはわかりませんが、条件が揃えば見ることもできるでしょう。神樹の里は常春で雨が降ることもありませんからね』
そう言えば、雨が降っている様子を確認したこともこの1年以上ありませんでしたね。
気温や天候管理はすべてメイヤがやっているはずなので、僕らが暮らしやすいようにしてくれているのでしょう。
でも、そうなると、水を飲まなければいけない住民たちはどうしているのか?
これもメイヤに確認しなくちゃいけませんね。
「マーマン、アクエリア、説明ありがとうございます。それで、川を作るのは問題ないのでしょうか?」
『構いませんよ。ただ、あまりにもたくさんの水が流れ込まれても困りますが……』
『そこは私の方で調整いたしますよ、マーマン。川を作る許可をいただきありがとうございます』
『この程度でしたらお安いご用です。……それにしても淡水の魚たちが住み着きませんか。困ったものですね』
『……はい。〝王都〟との戦いの最中は気に留めておりませんでしたが、平和になってしまうとどうしても気になって』
『心中お察しいたします。私どもの海では、〝決戦〟前から様々な生き物が住み着いていましたので……』
『……うらやましい』
「はいはい、アクエリア。うらやましがっても始まりません。湖に戻りますよ」
「そういたしましょう。マーマン、ありがとうございました」
『いえ。契約者様と守護者様もまた遊びに来てください』
とりあえず、またマーマンを威嚇し始める前にアクエリアを引っ張って湖エリアへ帰りましょう。
まったく、海の環境がうらやましいからってマーメイドやマーマンに嫉妬しても意味がないでしょうに。