ウォルクさんが次に案内してくれたのは街の中央通りを通り越した先にある酒問屋。
ここが次の目的地のようです。
神眼でも悪い反応は出ていませんし、問題ないでしょう。
「へぇ、ここが酒問屋か」
「ええ。名前はスプリツオ。一般的な酒も取り扱っていますし、複数年熟成させた貴重品も取り扱っているので売り上げは上々なのです。ただ……」
「ただ……どうした?」
「店主が新しい酒の開発を目指してばかりでして。変わり者の店としても評判なんですよ」
「そいつは楽しめそうだ。早速、入ってみようぜ」
「はい。店主のユーディトがいれば話が早いのですが……」
「いないことがあるのか?」
「新しい酒の材料を手に入れるために出かけていることも多く……」
「まあ、いなかったら今回は諦めるさ。いることを期待しようぜ」
「そうでございますな」
店に入って行ったふたりを追いかけ僕とリンも店内へ。
そこにはたくさんの瓶に入ったお酒が売られています。
……僕には違いがよくわかりませんけど。
「ウォルク様。いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」
「こちらのドワーフの方が変わった酒を買い付けたいそうなのだ。ユーディトはいるか?」
「はい。ちょうど先日帰ってきたばかりです。呼んで参りますので少々お待ちを」
店員さんは裏へと駆け出していき、戻ってきた時に連れてきたのは熊獣人の方でした。
この方がユーディトさんでしょうか?
「おう、ウォルク。珍しい酒がほしいってドワーフはそいつかい?」
「うむ。初めまして、ベニャトという」
「私はユーディトだ。とりあえず、店の裏手にある醸造所にきな。造った酒もそこで保管してあるからね」
「期待させてもらうぞ」
「あー、この国のドワーフには不評だったんだよね。それでもいいなら試飲もさせてあげるよ」
「この国のドワーフの事情など知らん。俺は田舎者だからな」
「そっか。ともかくこっちだ。案内してやる」
ユーディトさんも善良な方です。
ウォルクさんの紹介してくれる方々は善良な方々ばかりで助かります。
「ここが作った酒をしまっている場所だ。試しに普通のワインを飲んでみるかい?」
「そうだな。それを飲ませてもらおう」
「わかった。……ほれ」
「……うむ。美味いな。これならほかの酒にも期待が持てるというもの」
「ありがとうよ。まずは……コメから作った酒でも飲んでみてもらおうか」
「コメ?」
「この国の一部で作られている穀物さ。麦のようにパンにしなくても美味しく食べられる変わった穀物なんだが……まあ、酒は飲んでみてのお楽しみだ」
ユーディトさんが奥の方へ案内してくれるとそこにあった樽から少量の……水のようなものを取り出しました。
あれがお酒?
「……それが酒なのか?」
「そう思っちまって誰も買ってくれないんだよ。まあ、飲んでみてくれ」
「うむ。……これは! 透き通った味わいの中に喉を通り抜けるときの刺激! まさに酒だ!」
「美味しいだろう? だが売れなくてねぇ」
「……売れないと言うことはこの酒を可能な限り買い占めていってもいいのか?」
「構わないよ。気に入ってくれたなら私らの店で使う分以外は売っても構わない」
「よし! まずはこの酒を買えるだけ買わせてもらおう! ほかに変わった酒はないか!?」
「あるよ。まずは果実酒を飲んでもらおうか」
「果実酒? 果物の酒か? ワイン以外の?」
「ああ。リンゴから作った酒は甘くて女でも飲みやすい。それ以外は、さっきのコメで作った酒に果実を漬け込んで果物の風味を取り込んだ酒になるね」
「それはまた面白いな! 是非飲ませてもらおう!」
「ドワーフなのに変わった物好きだねえ。ドワーフって言えばエールのイメージがあるんだが」
「俺の里ではなんでも飲むぞ! 果実酒とやらも飲ませてくれ!」
「あいよ。まずはリンゴの酒からだ。シュワシュワしているから一気に飲み干すんじゃないよ」
「うむ! 確かにこれは甘い。だがこれも変わった味で面白い! これも買わせてもらおう!」
「助かるよ。作ったはいいが売れなくて困っていたんだ」
そのあともベニャトは様々な果実酒を飲み、そのたびに買い付けを行っていました。
ベニャトってそんなに持ち帰ることができるのでしょうか?
「お次は焼酎って酒だ。さっきのコメから作った蒸留酒になるね」
「ほほう。それは楽しみだ」
「私の自信作でもある。飲んでみてくれ」
「む。顔を近づけただけでもアルコール独特の匂いがする。……おお、これも美味い! 喉を焼く感触がたまらん!」
「本当に変わったもんが好きだねえ。悪いけど焼酎はあまり量を売れないよ。ほかの酒の材料にもなるんだ」
「なるほど。そちらも試させて頂けるか?」
「構わないが……さっきの果実酒の焼酎版が多いよ? 焼酎で作った方が味が濃くなるんだけどね」
「それもまたいいな。試させてもらいたい」
「構わないよ。でも、売れるのは一樽ずつだ。私らも研究目的で作ったものしかないからね」
「それでも構わないとも。さあ、続きを!」
「わかった。こっちだよ」
ベニャトはこちらでも試飲した樽をすべて買い取っていきます。
そんなに買って大丈夫なんですか、本当に?
「最後はビールだ。こいつはエールの親戚さ」
「エールの親戚? どういう意味だ?」
「ここまで私の酒を気に入ってくれたんだ、造り方も教えてあげるよ。エールを作る時は酵母も使う、それは知っているね?」
「もちろんだとも。それがなにか?」
「ビールを造るときは酵母を変えるんだ。そして、熟成させるときの温度も下げてやらなくちゃならない。そうするとエールとは違い、のどごしのいい〝ビール〟って言う酒になるんだよ」
「ふむ。それは試してみる価値がありそうだ」
「気に入ってくれたならビール酵母も分けてあげる。とりあえず飲んでみておくれ」
「わかった。なるほど! エールような香りはないがすっきりとしてのどごしがいい! これはこれで飲むときに楽しめそうだ!」
「それじゃあビールも買っていってくれるかい? ドワーフなら買っていくと考えて作りすぎちまってるんだよ……」
「もちろん、買えるだけ買っていくとも! いままでの代金はどれくらいになる!?」
「そうさね……全部余り物だし正直不良在庫だ。引き取ってもらえるだけで丸儲け。金貨70枚程度でどうだい?」
「金貨70枚か? 確かミスリル貨は金貨100枚だったな。それを払うから今後も新しい酒の研究を続けてくれ。なんとしてでもまた買いに来ることができるように話を取り付ける!」
「そこまで気に入ってくれるなんて本当に嬉しいよ! じゃあ、ミスリル貨1枚、確かに受け取った! 新しい酒やいまある酒の再生産は任せておくれ!」
「うむ! よろしく頼む!」
こちらでも話はまとまったようです。
でもベニャトがここに来るためには僕とリンが一緒に来る必要があるわけで……メイヤが許してくれるかどうか。
いまのベニャトならメイヤを拝み倒してでも許可を取り付けそうですが。
ここが次の目的地のようです。
神眼でも悪い反応は出ていませんし、問題ないでしょう。
「へぇ、ここが酒問屋か」
「ええ。名前はスプリツオ。一般的な酒も取り扱っていますし、複数年熟成させた貴重品も取り扱っているので売り上げは上々なのです。ただ……」
「ただ……どうした?」
「店主が新しい酒の開発を目指してばかりでして。変わり者の店としても評判なんですよ」
「そいつは楽しめそうだ。早速、入ってみようぜ」
「はい。店主のユーディトがいれば話が早いのですが……」
「いないことがあるのか?」
「新しい酒の材料を手に入れるために出かけていることも多く……」
「まあ、いなかったら今回は諦めるさ。いることを期待しようぜ」
「そうでございますな」
店に入って行ったふたりを追いかけ僕とリンも店内へ。
そこにはたくさんの瓶に入ったお酒が売られています。
……僕には違いがよくわかりませんけど。
「ウォルク様。いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」
「こちらのドワーフの方が変わった酒を買い付けたいそうなのだ。ユーディトはいるか?」
「はい。ちょうど先日帰ってきたばかりです。呼んで参りますので少々お待ちを」
店員さんは裏へと駆け出していき、戻ってきた時に連れてきたのは熊獣人の方でした。
この方がユーディトさんでしょうか?
「おう、ウォルク。珍しい酒がほしいってドワーフはそいつかい?」
「うむ。初めまして、ベニャトという」
「私はユーディトだ。とりあえず、店の裏手にある醸造所にきな。造った酒もそこで保管してあるからね」
「期待させてもらうぞ」
「あー、この国のドワーフには不評だったんだよね。それでもいいなら試飲もさせてあげるよ」
「この国のドワーフの事情など知らん。俺は田舎者だからな」
「そっか。ともかくこっちだ。案内してやる」
ユーディトさんも善良な方です。
ウォルクさんの紹介してくれる方々は善良な方々ばかりで助かります。
「ここが作った酒をしまっている場所だ。試しに普通のワインを飲んでみるかい?」
「そうだな。それを飲ませてもらおう」
「わかった。……ほれ」
「……うむ。美味いな。これならほかの酒にも期待が持てるというもの」
「ありがとうよ。まずは……コメから作った酒でも飲んでみてもらおうか」
「コメ?」
「この国の一部で作られている穀物さ。麦のようにパンにしなくても美味しく食べられる変わった穀物なんだが……まあ、酒は飲んでみてのお楽しみだ」
ユーディトさんが奥の方へ案内してくれるとそこにあった樽から少量の……水のようなものを取り出しました。
あれがお酒?
「……それが酒なのか?」
「そう思っちまって誰も買ってくれないんだよ。まあ、飲んでみてくれ」
「うむ。……これは! 透き通った味わいの中に喉を通り抜けるときの刺激! まさに酒だ!」
「美味しいだろう? だが売れなくてねぇ」
「……売れないと言うことはこの酒を可能な限り買い占めていってもいいのか?」
「構わないよ。気に入ってくれたなら私らの店で使う分以外は売っても構わない」
「よし! まずはこの酒を買えるだけ買わせてもらおう! ほかに変わった酒はないか!?」
「あるよ。まずは果実酒を飲んでもらおうか」
「果実酒? 果物の酒か? ワイン以外の?」
「ああ。リンゴから作った酒は甘くて女でも飲みやすい。それ以外は、さっきのコメで作った酒に果実を漬け込んで果物の風味を取り込んだ酒になるね」
「それはまた面白いな! 是非飲ませてもらおう!」
「ドワーフなのに変わった物好きだねえ。ドワーフって言えばエールのイメージがあるんだが」
「俺の里ではなんでも飲むぞ! 果実酒とやらも飲ませてくれ!」
「あいよ。まずはリンゴの酒からだ。シュワシュワしているから一気に飲み干すんじゃないよ」
「うむ! 確かにこれは甘い。だがこれも変わった味で面白い! これも買わせてもらおう!」
「助かるよ。作ったはいいが売れなくて困っていたんだ」
そのあともベニャトは様々な果実酒を飲み、そのたびに買い付けを行っていました。
ベニャトってそんなに持ち帰ることができるのでしょうか?
「お次は焼酎って酒だ。さっきのコメから作った蒸留酒になるね」
「ほほう。それは楽しみだ」
「私の自信作でもある。飲んでみてくれ」
「む。顔を近づけただけでもアルコール独特の匂いがする。……おお、これも美味い! 喉を焼く感触がたまらん!」
「本当に変わったもんが好きだねえ。悪いけど焼酎はあまり量を売れないよ。ほかの酒の材料にもなるんだ」
「なるほど。そちらも試させて頂けるか?」
「構わないが……さっきの果実酒の焼酎版が多いよ? 焼酎で作った方が味が濃くなるんだけどね」
「それもまたいいな。試させてもらいたい」
「構わないよ。でも、売れるのは一樽ずつだ。私らも研究目的で作ったものしかないからね」
「それでも構わないとも。さあ、続きを!」
「わかった。こっちだよ」
ベニャトはこちらでも試飲した樽をすべて買い取っていきます。
そんなに買って大丈夫なんですか、本当に?
「最後はビールだ。こいつはエールの親戚さ」
「エールの親戚? どういう意味だ?」
「ここまで私の酒を気に入ってくれたんだ、造り方も教えてあげるよ。エールを作る時は酵母も使う、それは知っているね?」
「もちろんだとも。それがなにか?」
「ビールを造るときは酵母を変えるんだ。そして、熟成させるときの温度も下げてやらなくちゃならない。そうするとエールとは違い、のどごしのいい〝ビール〟って言う酒になるんだよ」
「ふむ。それは試してみる価値がありそうだ」
「気に入ってくれたならビール酵母も分けてあげる。とりあえず飲んでみておくれ」
「わかった。なるほど! エールような香りはないがすっきりとしてのどごしがいい! これはこれで飲むときに楽しめそうだ!」
「それじゃあビールも買っていってくれるかい? ドワーフなら買っていくと考えて作りすぎちまってるんだよ……」
「もちろん、買えるだけ買っていくとも! いままでの代金はどれくらいになる!?」
「そうさね……全部余り物だし正直不良在庫だ。引き取ってもらえるだけで丸儲け。金貨70枚程度でどうだい?」
「金貨70枚か? 確かミスリル貨は金貨100枚だったな。それを払うから今後も新しい酒の研究を続けてくれ。なんとしてでもまた買いに来ることができるように話を取り付ける!」
「そこまで気に入ってくれるなんて本当に嬉しいよ! じゃあ、ミスリル貨1枚、確かに受け取った! 新しい酒やいまある酒の再生産は任せておくれ!」
「うむ! よろしく頼む!」
こちらでも話はまとまったようです。
でもベニャトがここに来るためには僕とリンが一緒に来る必要があるわけで……メイヤが許してくれるかどうか。
いまのベニャトならメイヤを拝み倒してでも許可を取り付けそうですが。