メイヤが一週間で集めると言っていた情報ですが3日で届きました。

 ウィンディたちも相当はりきったようです。

 代わりに植えた作物を育てるのを手伝わせるのが条件とされましたが……まあ、ドワーフたちがほしいのは収穫したものであって育てる過程ではないのですから問題ないでしょう。

 さて、その情報ですがメイヤ経由で教えてもらうことになりました。

「クエスタ公国?」

『そうらしいわ。神樹の里からだと国を4つほど超えた場所ね。立地条件が良くて国防に割く兵力が少なくて済み、なおかつ肥沃な大地と欠かさぬ土壌改良の結果、大量の穀物や果物などを輸出している一大産地でもあるらしいのよ。この国を攻め滅ぼしてしまうと食糧供給がままならなくなる国もあるらしいから、食料を安く供給する見返りに国防力を貸している国々も多いらしいわね』

「そんな国もあったんですね。僕の暮らしていた辺境の村とは大違いです」

「ガインの森とも大違いですね。ガインの森もそこまで豊かな食料生産能力はありませんでしたから」

「そうなの、ディーヴァ?」

「はい。リンは知らないでしょうがガインの森も決して裕福だったわけではないのです」

『ともかく、その国でなら目的となっている種や苗もたくさん買えると思うわ。まあ、ひとつでも買ってきてくれれば私が同じものを複製してあげるのだけれど』

「メイヤってそんなこともできるんですね」

『植物に関してならいろいろできるわ。行く国はそこで構わないかしら?』

「メイヤ様の推薦でしたら問題ないでしょう。……そもそも、私たちはほかの国を知りません」

『……それもそうだわ。ほかの国々も見て歩いたらしいけれど、やっぱり食物の種や苗は売っていなかったり高かったりするらしいのよ。そもそも、そういうものって農家が持っているものだしそう簡単に市場には出回らないらしいのよね』

 そう言われればそうかもしれません。

 僕は田舎の村育ちなので麦の種などを普通に見ていましたが、街で同じものが買えるとは限りませんからね。

 そう考えると今回の要望ってかなり無理があるお願いだったのでは?

『行く国は決定ね。あとは行く街なのだけれど、そちらも目星が付いているわ』

「手際がいいですね、ウィンディたちは」

『初日で国の目星をつけて2日目ですべての街や村を調べたらしいわよ? それで行く街なのだけれど〝フロレンシオ〟と言う街ね』

「フロレンシオですか? メイヤ様、どのような特徴がある街なのでしょう?」

『一言で言ってしまうと〝商業都市〟よ。もちろん食料生産国らしく周辺地域で様々な作物を栽培しているけれどメインは商売ね。エアリアルから報告を受けたウィンディが直接見て回ったそうだけど、目的の種や苗を売っているお店もあったらしいわ。高級なお店から安めなお店までアクセサリーショップも多かったらしいから金策にも困らないそうね』

「至れり尽くせりですね。問題点や懸念点は?」

『〝商業都市〟と言うところね。なんだかんだ言ってもあなた方は全員田舎者だからだまされやすそうだもの。気をつけないと面倒なことになるわよ?』

 確かに僕は言われるまでもなく田舎者ですし、リンだってエルフの森で隔離生活のあとは逃亡生活を続けていた身。

 ディーヴァを連れて行っても同じことですし……困りました。

『とりあえずリンも神眼を覚えなさい。ふたりとも街中ではそれを常に発動し続けること。そうすればヒト族の善意や悪意なんて簡単に見抜けるわ。少しでも悪意が見て取れる相手は信用せずに近寄らないようにしなさい。いいわね?』

「わかりました、メイヤ様」

『あとは、他人の前で時空魔法の保管庫からものの出し入れをしないこと。時空魔法なんてヒト族の間では伝説級の代物だからね。それを使えるだけでも騒ぎの種になりかねないのに、使える者がふたりも一緒に歩いているだなんて怪しいことこの上ないわ。くれぐれも注意なさい』

「ええ、気をつけます。ほかには?」

『そういう街では物盗りが多いとも聞くわ。そちらは……マインに頼んでそういった真似ができないようにするアクセサリーでも作ってもらいましょう。それが一番早いもの』

「ですね。それ以外はどうしましょう?」

『私も人間の街のことまでは詳しくないわ。これ以上はベニャトに聞いてみて。発端はドワーフたちなのだし多少は知識を持っているでしょう』

「そうしますか。さて、食事も終わってますしドワーフたちのところに行ってマインとベニャトに相談です」

「うん、そうしよう」

 基本方針が決まったので僕たちは鉱山へと向かいました。

 そこでマインとベニャトを呼んでメイヤから聞いた話を共有です。

『ふむ。確かに契約者も守護者も街の暮らしには疎すぎるな。街中では魔力上昇のアクセサリーなど必要ないはずじゃ。防犯用のアクセサリーに切り替えよう』

「お願いします、マイン。ベニャトから意見は?」

「特にないな。精霊様たちが見つけてくれた街ってのを信じていってみるだけだ。ただ、俺も大きな街には入ったことがない。悪いがアクセサリーショップの見極めはふたりの神眼頼りになっちまう。それでも構わないか?」

「いいよ。ほかに気をつける点ってある?」

「俺たちが作った鎧なんかを着ていくのはまずい。上物すぎて目立っちまう。テイラーメイド様の服だけなら上物だろうと目立たないはずだ。旅人のフリをして街に侵入しよう」

「……侵入? 普通に入るのではなく?」

「そういった大きな街になると入街税……つまり、街に入るための費用が高く付くんだ。特に俺たち3人は身分証を持っていない。そういう連中は入街税がより高くなっちまう。金をケチるつもりはないが、どれだけの金を請求されるかわからないしそもそも街に入れてもらえるかもわからない。ノーム様、透明化のアクセサリーもお願いします」

『ヒト族の街に入るためにヒト族の掟を破るのは好ましくないが今回は仕方がないか。飛行と盗難防止、透明化のアクセサリーを用意しよう。近くまでは幻獣で飛び、街から捕捉できない距離で幻獣から離れ透明化と飛行のアクセサリーで街に侵入。物陰など目立たない場所で透明化を解除して買い物に行くがいい』

「ありがとうございます。必ず酒の材料を揃えてみせます」

『……まあ、好きにしろ。ちなみにどのような酒を造るつもりなのだ?』

「エール、ワイン、ブランデー、ウィスキーですかね? ほかにも果実の種が売っていればいろいろ買ってきてそっちでも酒が造れないか試してみます」

『……本当に好きにしろ。契約者と守護者、こやつがあまりにも無理な買い物をしそうになったら止めてくれ』

「……わかりました」

「……ちょっと自信がありませんが思いとどまらせます」

 とりあえずマインとベニャトとも打ち合わせが終わったので今日は解散。

 翌日にはアクセサリーもできたらしいのでペガサスのシエロとシエルへ乗り、ウィンディに道案内をしてもらいながらクエスタ公国フロレンシオの街を目指します。

 途中、いくつもの山や川を越えましたがさすがは幻獣や五大精霊。

 目的の街まで3時間ほどで着きました。

「あれがフロレンシオの街ですか?」

『はい。あの壁に囲まれた街がフロレンシオです』

「本当に大きな街だね。人もたくさんいそう」

『実際に大勢のヒト族で賑わっていましたよ。さて、私は透明化してこの先もご案内しますがシエロとシエルはここまでですね』

『すまないがそうなるな。これ以上近づくと見張りから発見されかねない』

『ここで待っているわ。気をつけて行ってきてね』

「うん。2匹も気をつけてね」

『では参りましょうか。契約者、守護者、ベニャト。付いてきてください』

 ウィンディに案内されてフロレンシオの壁を飛び越え街の中へと舞い降ります。

 着地したのは路地裏と呼ばれるらしい建物と建物の影になっている場所で誰もいないところ。

 透明化も解除しましたし、空からウィンディも一緒についてきてくれるらしいのでなにかあっても大丈夫……と信じてフロレンシオでの買い物を済ませましょう。