「〝狩り〟の被害、増すばかりですね……」
「うん。手の施しようがなくなってきてる……」
フランベルジュも加わったことにより一層探索可能範囲は広がりました。
ですが、わかることは〝狩り〟の被害が至る所で出ているということだけ。
みんなの話では幻獣や精霊、妖精のほかにも魔獣まで連れ去っているらしいのです。
一体、〝王都〟と言う場所はなにを考えてそのようなことをしているのか。
どの存在もひとたび暴れ出せば人間のかなう相手ではないというのに。
メイヤとヴォルケーノボムにも来てもらい相談です。
『本当に困ったものね。五大精霊にまで手を出すなんてなにを考えているのやら』
『儂にもわからんよ。多少の対抗装備があったところで儂らにゃ意味をなさんけんの。それを封じるために、儂は火山を殺され、アクエリアは湖をヒュドラの毒で汚染された。直接的な被害はまだ受けとらんかったがウィンディやマイン、トルマリンに対抗する策も持っていたのじゃなかろうかいな』
「五大聖霊様ですら捕らえられる手段ですか……恐ろしいです」
『儂ら五大精霊は幻獣よりも強い。それを捕らえようとするあたりなにかあるはず』
『問題はその〝なにか〟がまったくつかめないことですね。私はまだ新木でしかなかった神樹なので詳しくは知りません。ですが、〝王都〟とはこのような横暴を毎年行っているのですか?』
『儂も詳しくは知らん。ウィンディの方が詳しいはずばい。シント、彼女を』
「わかりました。すみません、ウィンディ、来てもらえますか」
僕はヴォルケーノボムの求めに応じて風の五大精霊シルフィードのウィンディを呼び出しました。
彼女も呼びかけに応じてすぐに来てくれましたね。
『お招きとあれば。いかがしましたか?』
『ウィンディ、〝王都〟の〝狩り〟とは毎年このように酷いものなのでしょうか?』
『聖霊様、私の知る限りではここまで酷かったことはありません。毎年、幾例かは知っていますがその程度です。大々的に調べているのが今回初めてと言うのもありますが、〝幻獣狩り〟や〝五大精霊狩り〟などと言った大きな出来事があれば必ず私の耳に入ります』
『そうですよね。人間が秘薬の素材として妖精や精霊を殺したり捕まえたりする事例があるとは聞いています。ですが生きたまま捕まえる、それもこれほど大規模な軍勢を率いて〝狩り〟などと称し捕まえるなど……』
『申し訳ありません、お役に立てず』
『いえ、気にしていません。それで、変わったことはありましたか?』
『変わったこと……そうですね、精霊や妖精の居住地ではないはずの森が数カ所焼け落ちていました。あれは一体なんなのでしょう?』
『ふむ、儂も気になるけんの。詳しそうなのは……ツリーハウスか?』
「じゃあ、呼んでみます。ツリーハウス、来てもらえる?」
リンの呼びかけでツリーハウスもやってきました。
ただ、答えは意外なものでしたが。
『ああ、その森。おそらくエルフの居住地ですね。エルフの居住地となった森はドライアドの支配下から切り離されてしまうので、ほかのドライアド仲間からも連絡がないということはそういうことなのでしょう』
「エルフの居住地ですか?」
『はい。彼らは自分たちの縄張りとする森の範囲を決めてしまうと魔法でその範囲を切り取ってしまいます。そのため、植物系の精霊と妖精もその中には干渉できません。一部分だけが焼け落ち、周囲に延焼していないということであればエルフの森が襲撃を受けたのかと』
「エルフの森まで? 一体なんのために?」
『それは私にも……』
「ああ、そうですよね。変なことを聞いてしまい申し訳ありません、ツリーハウス」
『気にしていません。ですが、どうしますか? ますます人間どもの狙いがわからなくなっています』
『そうですね……幻獣や精霊、妖精だけなら『珍しいもの』という共通点が生まれるでしょう。ですが、エルフの森まで襲撃をかけているとなると話が変わります。エルフは少数ですが人里にもいる者たち、わざわざその故郷を襲う理由がない。なんのための襲撃かよくわかりません』
ここまで話したときリンの顔が酷く青ざめていました。
一体どうしたのでしょう?
「あ、あの、メイヤ様。ひとつだけ心当たりが」
『リン、どうかしたの?』
「エルフの中にも〝精霊〟が暮らしているんです。ハイエルフ族の中で稀に生まれるエンシェントエルフ族らしいのですが、その方々が〝精霊〟だと言い伝えられております」
『エンシェントエルフ? ヴォルケーノボム、ウィンディ、ツリーハウス、聞いたことがある?』
『ないな』
『私も』
『私もありませんが……予想はできます。おそらく、エレメンタルエルフかと』
「エレメンタルエルフ? ツリーハウス、どういう種族なの?」
『ハイエルフ同士の子供の間で稀に生まれる子供です。〝精霊〟と同じ性質を持ち非常に長寿……と言いますか寿命で死ぬことはありません。大抵は食べ物の問題による栄養の偏りが問題です。ともかく、そういう種族です。でも、どうしてリンが知っているんですか?』
「その……私の暮らしていた森におひとりいたのです。私たちサードエルフにまで優しく声をかけ、歌を披露してくれる歌姫様が」
『なるほど。ただのハイエルフでなければエレメンタルエルフの可能性もあります』
「どうしよう。森のみんなはどうでもいいけど歌姫様だけは助けてあげたい……」
リンもいろいろと抱えていますからね。
村では両親から引き離され兵器として育てられたあげく魔獣との戦いの果てにその力を恐れられて追放。
そのあとも苦しんで生活してきたのでしょうから自分を虐げてきたエルフは見捨ててもいいが、自分に優しくしてくれたその歌姫様は助けてあげたいと。
わがままな願いに聞こえますが、人の心なんてそんなものです。
僕だって故郷の村が襲われていても助けるつもりはありませんし、両親すらその範囲ですからね。
ですが、どうしたものか……。
『リン、その決断、急いだ方がいいかも』
「ウィンディ?」
『あなたの暮らしていたエルフの森って『ガインの森』ですよね?』
「……は、はい。なぜそれを?」
『秘密。それよりもガインの森が人間どもの侵略軍に襲われています。すでに半数以上のエルフが戦死したか捕らえられたかしたみたい。その歌姫様というエルフが捕らえられるのも時間の問題ですね』
「……シント」
「わかりました。どのくらいで着きますか?」
『仲間のエアリアルがその上空で待機しています。そのエアリアルと位置を入れ替えることで一瞬のうちにガインの森へと出ることができますよ』
「お願い、シント」
「わかっていますよ。救うのは歌姫様だけでいいんですか?」
「私としてはそうしたいけど……優しい歌姫様がそれを望むかどうか」
「では、そこも交渉しましょう。戦える幻獣や精霊たち全員でいきましょうか。今回は対抗装備もろくに持っていないでしょうしすぐに終わるはずです」
「ありがとう、シント」
「気にしていませんよ。それではみんなが揃い次第出発です!」
その後、みんなをすぐに呼び集めてウィンディの言っていたとおりエアリアルと位置を入れ替え、ガインの森とやらの側へと出ました。
森の一角が赤く燃え広がっていますね、あれがエルフの居住地、ガインの森でしょうか?
「シント、まずは歌姫様の意向を伺いに行きたいの」
「わかりました。リュウセイだけ付いてきてください。僕とリンはシエロとシエルで歌姫様に会ってきます。ほかのみんなはここで待機を」
『気をつけてな』
「わかっていますよ。行きましょう」
「うん!」
歌姫様は森の奥にあるひときわ大きな木の家に住んでいるのだとか。
わかりやすくていいですし、行くのも便利なのですが……見張りが誰もいない?
「……おかしいな。私が知っている限り歌姫様は常に8人以上の護衛が付いているはずなんだけど」
「……不在でないことを祈りましょう。それでは入りますよ。シエロとシエルはここで待っていてください。リュウセイは付いてくるように」
「ガフゥ!」
どうにも奇妙ですが……ともかく中に入りましょう。
あまりにも不可解です。
「うん。手の施しようがなくなってきてる……」
フランベルジュも加わったことにより一層探索可能範囲は広がりました。
ですが、わかることは〝狩り〟の被害が至る所で出ているということだけ。
みんなの話では幻獣や精霊、妖精のほかにも魔獣まで連れ去っているらしいのです。
一体、〝王都〟と言う場所はなにを考えてそのようなことをしているのか。
どの存在もひとたび暴れ出せば人間のかなう相手ではないというのに。
メイヤとヴォルケーノボムにも来てもらい相談です。
『本当に困ったものね。五大精霊にまで手を出すなんてなにを考えているのやら』
『儂にもわからんよ。多少の対抗装備があったところで儂らにゃ意味をなさんけんの。それを封じるために、儂は火山を殺され、アクエリアは湖をヒュドラの毒で汚染された。直接的な被害はまだ受けとらんかったがウィンディやマイン、トルマリンに対抗する策も持っていたのじゃなかろうかいな』
「五大聖霊様ですら捕らえられる手段ですか……恐ろしいです」
『儂ら五大精霊は幻獣よりも強い。それを捕らえようとするあたりなにかあるはず』
『問題はその〝なにか〟がまったくつかめないことですね。私はまだ新木でしかなかった神樹なので詳しくは知りません。ですが、〝王都〟とはこのような横暴を毎年行っているのですか?』
『儂も詳しくは知らん。ウィンディの方が詳しいはずばい。シント、彼女を』
「わかりました。すみません、ウィンディ、来てもらえますか」
僕はヴォルケーノボムの求めに応じて風の五大精霊シルフィードのウィンディを呼び出しました。
彼女も呼びかけに応じてすぐに来てくれましたね。
『お招きとあれば。いかがしましたか?』
『ウィンディ、〝王都〟の〝狩り〟とは毎年このように酷いものなのでしょうか?』
『聖霊様、私の知る限りではここまで酷かったことはありません。毎年、幾例かは知っていますがその程度です。大々的に調べているのが今回初めてと言うのもありますが、〝幻獣狩り〟や〝五大精霊狩り〟などと言った大きな出来事があれば必ず私の耳に入ります』
『そうですよね。人間が秘薬の素材として妖精や精霊を殺したり捕まえたりする事例があるとは聞いています。ですが生きたまま捕まえる、それもこれほど大規模な軍勢を率いて〝狩り〟などと称し捕まえるなど……』
『申し訳ありません、お役に立てず』
『いえ、気にしていません。それで、変わったことはありましたか?』
『変わったこと……そうですね、精霊や妖精の居住地ではないはずの森が数カ所焼け落ちていました。あれは一体なんなのでしょう?』
『ふむ、儂も気になるけんの。詳しそうなのは……ツリーハウスか?』
「じゃあ、呼んでみます。ツリーハウス、来てもらえる?」
リンの呼びかけでツリーハウスもやってきました。
ただ、答えは意外なものでしたが。
『ああ、その森。おそらくエルフの居住地ですね。エルフの居住地となった森はドライアドの支配下から切り離されてしまうので、ほかのドライアド仲間からも連絡がないということはそういうことなのでしょう』
「エルフの居住地ですか?」
『はい。彼らは自分たちの縄張りとする森の範囲を決めてしまうと魔法でその範囲を切り取ってしまいます。そのため、植物系の精霊と妖精もその中には干渉できません。一部分だけが焼け落ち、周囲に延焼していないということであればエルフの森が襲撃を受けたのかと』
「エルフの森まで? 一体なんのために?」
『それは私にも……』
「ああ、そうですよね。変なことを聞いてしまい申し訳ありません、ツリーハウス」
『気にしていません。ですが、どうしますか? ますます人間どもの狙いがわからなくなっています』
『そうですね……幻獣や精霊、妖精だけなら『珍しいもの』という共通点が生まれるでしょう。ですが、エルフの森まで襲撃をかけているとなると話が変わります。エルフは少数ですが人里にもいる者たち、わざわざその故郷を襲う理由がない。なんのための襲撃かよくわかりません』
ここまで話したときリンの顔が酷く青ざめていました。
一体どうしたのでしょう?
「あ、あの、メイヤ様。ひとつだけ心当たりが」
『リン、どうかしたの?』
「エルフの中にも〝精霊〟が暮らしているんです。ハイエルフ族の中で稀に生まれるエンシェントエルフ族らしいのですが、その方々が〝精霊〟だと言い伝えられております」
『エンシェントエルフ? ヴォルケーノボム、ウィンディ、ツリーハウス、聞いたことがある?』
『ないな』
『私も』
『私もありませんが……予想はできます。おそらく、エレメンタルエルフかと』
「エレメンタルエルフ? ツリーハウス、どういう種族なの?」
『ハイエルフ同士の子供の間で稀に生まれる子供です。〝精霊〟と同じ性質を持ち非常に長寿……と言いますか寿命で死ぬことはありません。大抵は食べ物の問題による栄養の偏りが問題です。ともかく、そういう種族です。でも、どうしてリンが知っているんですか?』
「その……私の暮らしていた森におひとりいたのです。私たちサードエルフにまで優しく声をかけ、歌を披露してくれる歌姫様が」
『なるほど。ただのハイエルフでなければエレメンタルエルフの可能性もあります』
「どうしよう。森のみんなはどうでもいいけど歌姫様だけは助けてあげたい……」
リンもいろいろと抱えていますからね。
村では両親から引き離され兵器として育てられたあげく魔獣との戦いの果てにその力を恐れられて追放。
そのあとも苦しんで生活してきたのでしょうから自分を虐げてきたエルフは見捨ててもいいが、自分に優しくしてくれたその歌姫様は助けてあげたいと。
わがままな願いに聞こえますが、人の心なんてそんなものです。
僕だって故郷の村が襲われていても助けるつもりはありませんし、両親すらその範囲ですからね。
ですが、どうしたものか……。
『リン、その決断、急いだ方がいいかも』
「ウィンディ?」
『あなたの暮らしていたエルフの森って『ガインの森』ですよね?』
「……は、はい。なぜそれを?」
『秘密。それよりもガインの森が人間どもの侵略軍に襲われています。すでに半数以上のエルフが戦死したか捕らえられたかしたみたい。その歌姫様というエルフが捕らえられるのも時間の問題ですね』
「……シント」
「わかりました。どのくらいで着きますか?」
『仲間のエアリアルがその上空で待機しています。そのエアリアルと位置を入れ替えることで一瞬のうちにガインの森へと出ることができますよ』
「お願い、シント」
「わかっていますよ。救うのは歌姫様だけでいいんですか?」
「私としてはそうしたいけど……優しい歌姫様がそれを望むかどうか」
「では、そこも交渉しましょう。戦える幻獣や精霊たち全員でいきましょうか。今回は対抗装備もろくに持っていないでしょうしすぐに終わるはずです」
「ありがとう、シント」
「気にしていませんよ。それではみんなが揃い次第出発です!」
その後、みんなをすぐに呼び集めてウィンディの言っていたとおりエアリアルと位置を入れ替え、ガインの森とやらの側へと出ました。
森の一角が赤く燃え広がっていますね、あれがエルフの居住地、ガインの森でしょうか?
「シント、まずは歌姫様の意向を伺いに行きたいの」
「わかりました。リュウセイだけ付いてきてください。僕とリンはシエロとシエルで歌姫様に会ってきます。ほかのみんなはここで待機を」
『気をつけてな』
「わかっていますよ。行きましょう」
「うん!」
歌姫様は森の奥にあるひときわ大きな木の家に住んでいるのだとか。
わかりやすくていいですし、行くのも便利なのですが……見張りが誰もいない?
「……おかしいな。私が知っている限り歌姫様は常に8人以上の護衛が付いているはずなんだけど」
「……不在でないことを祈りましょう。それでは入りますよ。シエロとシエルはここで待っていてください。リュウセイは付いてくるように」
「ガフゥ!」
どうにも奇妙ですが……ともかく中に入りましょう。
あまりにも不可解です。