俺は朝早くから奴隷オークションが行われる会場に足を運んでいた。
数百人の貴族や多数の冒険者が、待ちきれないと言った様子で忙しなくしている。
「……すごい人気だな」
俺は一般人に紛れ込んで最後方の一般席に座ると、遠くに見えるステージの様子を窺いながら、始まりの時を待っていた。
「———これより奴隷オークションを開催致します! 月に一回限りの最高のショーを存分にお楽しみください! 本日ご紹介する奴隷は十名! どれも不幸な背景があるものばかり! お安く提供させていただきますっ!」
席について大人しく待つこと数十分。
ようやく奴隷オークションの開始を告げるゴングがなった。
同時に眩しいくらいに明るかった照明が一気に消灯されて、ステージの中心にスポットライトが当てられた。
そこには、口髭の生えた胡散臭いオヤジが立っており、集まったオーディエンスを盛り上げるようにして声を張り上げていた。
「早く始めろよォォ!!」
「俺は今日のために金を貯めてきたんだぞ!」
「早く俺にエルフを売ってくれ!」
「———ボルテージは既に最高潮! 皆様をお待たせしてしまうのは私の心も苦しいので、早速ですが、一人目の奴隷の紹介に移りたいと思います! 最初の奴隷はこいつだ! 小人族の女性! 奴隷に堕ちた理由は、貧困に陥った村を救うため……つまり、身売りだ! 年齢は十六歳! そして未だ夜の経験がない生娘です! 値段は百万ゼニーから!」
奴隷オークションに訪れるのは久しぶりだったが、やはりかなり複雑な気分になるな。
人が金で売られていく姿を見るのは心が痛い。
「百五十!」
「百五十五」
「……百八十」
如何にもな顔をした成金貴族たちが、次々と声を上げていく様子はなんとも滑稽だ。
当人たちは変装のつもりで、似たような気色の悪い仮面をつけているが、わかる人が見れば声や体型だけで一目で看破できる。
まあ、一般の民にバレなければいいという考えなのだろう。
「百八十でよろしいのですか!?」
「———二百五十だ!」
「これ以上はいませんか!? では、二百五十万ゼニー! ご購入なされたそちらのお客様は帰り際にこちらまでお越しください!」
「や、やったぞ! 僕の奴隷コレクションが増えていくぞ!」
ブクブクと太った男に、小人族の女性は買われていった。
売られる奴隷に口を出す権利は一切なく、こういう危ない輩に買われたら最後。
死ぬまで慰み者にされるのがオチだろう。
小人族の女性は悲しげな表情を浮かべているが、俺にはどうすることもできない。
申し訳ない気持ちでいっぱいだが、そこはグッと堪えることにした。
「では次の奴隷は———」
ステージの真ん中に立つ奴隷商人の男は、スムーズに次の奴隷の紹介に入っていった。
さて、彼女はいつ出てくるかな。
俺はステージに意識を集中させながらその時を待つことにした。
数百人の貴族や多数の冒険者が、待ちきれないと言った様子で忙しなくしている。
「……すごい人気だな」
俺は一般人に紛れ込んで最後方の一般席に座ると、遠くに見えるステージの様子を窺いながら、始まりの時を待っていた。
「———これより奴隷オークションを開催致します! 月に一回限りの最高のショーを存分にお楽しみください! 本日ご紹介する奴隷は十名! どれも不幸な背景があるものばかり! お安く提供させていただきますっ!」
席について大人しく待つこと数十分。
ようやく奴隷オークションの開始を告げるゴングがなった。
同時に眩しいくらいに明るかった照明が一気に消灯されて、ステージの中心にスポットライトが当てられた。
そこには、口髭の生えた胡散臭いオヤジが立っており、集まったオーディエンスを盛り上げるようにして声を張り上げていた。
「早く始めろよォォ!!」
「俺は今日のために金を貯めてきたんだぞ!」
「早く俺にエルフを売ってくれ!」
「———ボルテージは既に最高潮! 皆様をお待たせしてしまうのは私の心も苦しいので、早速ですが、一人目の奴隷の紹介に移りたいと思います! 最初の奴隷はこいつだ! 小人族の女性! 奴隷に堕ちた理由は、貧困に陥った村を救うため……つまり、身売りだ! 年齢は十六歳! そして未だ夜の経験がない生娘です! 値段は百万ゼニーから!」
奴隷オークションに訪れるのは久しぶりだったが、やはりかなり複雑な気分になるな。
人が金で売られていく姿を見るのは心が痛い。
「百五十!」
「百五十五」
「……百八十」
如何にもな顔をした成金貴族たちが、次々と声を上げていく様子はなんとも滑稽だ。
当人たちは変装のつもりで、似たような気色の悪い仮面をつけているが、わかる人が見れば声や体型だけで一目で看破できる。
まあ、一般の民にバレなければいいという考えなのだろう。
「百八十でよろしいのですか!?」
「———二百五十だ!」
「これ以上はいませんか!? では、二百五十万ゼニー! ご購入なされたそちらのお客様は帰り際にこちらまでお越しください!」
「や、やったぞ! 僕の奴隷コレクションが増えていくぞ!」
ブクブクと太った男に、小人族の女性は買われていった。
売られる奴隷に口を出す権利は一切なく、こういう危ない輩に買われたら最後。
死ぬまで慰み者にされるのがオチだろう。
小人族の女性は悲しげな表情を浮かべているが、俺にはどうすることもできない。
申し訳ない気持ちでいっぱいだが、そこはグッと堪えることにした。
「では次の奴隷は———」
ステージの真ん中に立つ奴隷商人の男は、スムーズに次の奴隷の紹介に入っていった。
さて、彼女はいつ出てくるかな。
俺はステージに意識を集中させながらその時を待つことにした。