俺は黒いローブで全身を包み、闇に紛れて邸宅の門に近づいた。
月明かりの下で影を潜め、巧妙な身のこなしで警備の騎士たちの目をかわす。
と言っても、騎士たちはこんな時間だからこそ集中力を欠いているのか、その佇まいとは裏腹に警戒している様子はなさそうだった。
この分なら音さえ立てなければ、堂々と作業をしてもバレないだろう。
そう思った俺は、まるで風のように静かに、それでいえ影のように不可視になって門に近づいた。
先ほどまでは重厚に見えた錠もかなり年季が入っており、錆や汚れで劣化が目立つ。
「……壊すか」
俺はそっと錠に右手を添えると、瞬間的に強大な魔力を掌から注ぎ込んだ。
パキッ……内部が壊れる小さな音が聞こえたが、頭まで完全に武装している騎士たちの耳には届かず、そんな些細な音は夜風に流されて消えていった。
俺は壊れた錠をその辺の草木に放り投げると、半身がギリギリ通れる程度まで門を静かに開けて、ひっそりとした中に足を踏み入れた。
門の向こうには広大な庭園が広がっている。
庭園にいる騎士たちは、特に周囲を見回すわけでもなく、夜の静寂に身を委ねている。
「……」
俺はすぐに側にあった巨大な彫刻の陰に隠れ、歩みを止めて敵の概要を把握することにした。
騎士たちの数は全部で五人。
邸宅の入り口を塞ぐ様にして立つ者が二人、庭園内をゆっくりと歩き回る者が二人、最後の一人は微動だにせず隅の方で直立している。
気配からしてあの直立している騎士は、器用にも立ったまま眠りこけているらしい。
アーマーの向こうにある表情は見えないが、首がこくりこくり……と、僅かに揺れている。
あいつは無視でいいな。
やるとしても最後だ。
となると、手前から順に仕留めていくのがベストだな。
「……」
そう思い立った俺は中腰で彫刻の影から抜け出した。
邸宅を囲う外壁の内側に沿うようにして歩いていき、一人目のターゲットである右手側の騎士の背後へ向かう。
歩き回る二人の騎士は規則的なルートで楕円を描くようにして歩いているので、それぞれが最も遠い地点に位置する場所をピンポイントで狙う。
簡単に言うなら、二人が端と端に向かい、くるりと体を反転させる地点だ。
距離にして五メートル。
時間にしてあと八秒……五……二……今だ。
その瞬間。俺は中腰を解除して素早く地を駆けると、騎士の背後に忍び寄り、静かに頸に手刀を落とす。
「ッ!?」
すると、騎士は一瞬喉が詰まったような呼吸をしたが、すぐに意識を奪われ力無くよろけ始めた。
俺は間髪入れずに騎士の体を支えると、花壇の石段の影に隠すようにして寝かしつけた。
まずは一人。
月明かりの下で影を潜め、巧妙な身のこなしで警備の騎士たちの目をかわす。
と言っても、騎士たちはこんな時間だからこそ集中力を欠いているのか、その佇まいとは裏腹に警戒している様子はなさそうだった。
この分なら音さえ立てなければ、堂々と作業をしてもバレないだろう。
そう思った俺は、まるで風のように静かに、それでいえ影のように不可視になって門に近づいた。
先ほどまでは重厚に見えた錠もかなり年季が入っており、錆や汚れで劣化が目立つ。
「……壊すか」
俺はそっと錠に右手を添えると、瞬間的に強大な魔力を掌から注ぎ込んだ。
パキッ……内部が壊れる小さな音が聞こえたが、頭まで完全に武装している騎士たちの耳には届かず、そんな些細な音は夜風に流されて消えていった。
俺は壊れた錠をその辺の草木に放り投げると、半身がギリギリ通れる程度まで門を静かに開けて、ひっそりとした中に足を踏み入れた。
門の向こうには広大な庭園が広がっている。
庭園にいる騎士たちは、特に周囲を見回すわけでもなく、夜の静寂に身を委ねている。
「……」
俺はすぐに側にあった巨大な彫刻の陰に隠れ、歩みを止めて敵の概要を把握することにした。
騎士たちの数は全部で五人。
邸宅の入り口を塞ぐ様にして立つ者が二人、庭園内をゆっくりと歩き回る者が二人、最後の一人は微動だにせず隅の方で直立している。
気配からしてあの直立している騎士は、器用にも立ったまま眠りこけているらしい。
アーマーの向こうにある表情は見えないが、首がこくりこくり……と、僅かに揺れている。
あいつは無視でいいな。
やるとしても最後だ。
となると、手前から順に仕留めていくのがベストだな。
「……」
そう思い立った俺は中腰で彫刻の影から抜け出した。
邸宅を囲う外壁の内側に沿うようにして歩いていき、一人目のターゲットである右手側の騎士の背後へ向かう。
歩き回る二人の騎士は規則的なルートで楕円を描くようにして歩いているので、それぞれが最も遠い地点に位置する場所をピンポイントで狙う。
簡単に言うなら、二人が端と端に向かい、くるりと体を反転させる地点だ。
距離にして五メートル。
時間にしてあと八秒……五……二……今だ。
その瞬間。俺は中腰を解除して素早く地を駆けると、騎士の背後に忍び寄り、静かに頸に手刀を落とす。
「ッ!?」
すると、騎士は一瞬喉が詰まったような呼吸をしたが、すぐに意識を奪われ力無くよろけ始めた。
俺は間髪入れずに騎士の体を支えると、花壇の石段の影に隠すようにして寝かしつけた。
まずは一人。