「ふーん……マスターの知り合いにそういう人いないの?」
一人頭の中で納得していると、突然シエルが下からこちらを見上げて聞いてきた。
「……どうして俺に振るんだ?」
「マスターってなぜか大金持ちでしょ? 知り合いにそういう人もいるのかなぁって思ったの」
「……」
一千万ゼニーをぽんっと払ってシエルを買うくらいには大金持ちだが、その返答は今の俺を困らせるには十分すぎた。
俺にそんな知り合いはいないが、一度首を突っ込んだ話をそう無碍には扱えない。
「マスター、もしもそういった知り合いがいるのであれば是非紹介してほしい。紹介金なら弾むし、今後も何かあれば冒険者ギルドは率先して依頼すると約束する」
無言で黙り込む俺の前にアレンがやってきた。
彼はまっすぐな瞳でこちらを見つめてくる。
本当に困っているのであれば助けないという選択肢はないか……。
乗りかかった船だ。本当は目立つ真似はしたくないのだが、今回だけは最後まで付き合ってるとしよう。
「……一名だけ心当たりがあります」
「本当か!?」
俺がおもむろに口を開くと、アレンは前のめりになって聞き返してきた。
パァッと表情が明るくなっていることから、相当切羽詰まっていたことがわかる。
「ええ。ですが、彼は少々強引なところがありますので、命を奪うまではせずとも無茶をしてしまうかもしれません。それでもよろしいですか?」
手加減は得意だが、少々やり過ぎてしまうかもしれない。
後、人殺しは趣味じゃないし気持ちが悪いのでやるつもりはない。
「ああ。黒幕ってのは中々に周りから嫌われているから、少しばかり痛い目に遭わせても問題ねぇぜ! それで、どこに行けば会えるんだ?」
「では、一週間後の夜半過ぎにアレン様の執務室に向かわせても宜しいですか?」
明日や明後日だと少々スパンが短すぎて相手が警戒していそうなので、あえてほとぼりが冷めるであろう一週間後に約束の日時を設定することにした。
「いいぜ。夜中でもギルドは開いてるから、受付嬢にそれらしき奴がきたら上に通すように伝えておくからよ」
「かしこまりました」
俺は恭しく頭を下げた.
「いやぁ、マジで助かったぜ。ちなみにその男は信用に足る人物なのか?」
「ええ。私が知る中で最も強い人物ですし、今は冒険者稼業を引退しているので自由も効きます。きっと望み通りの結果が得られることでしょう」
俺は嘘偽りのない情報を与えた。
公爵家の一人息子を罰する程度の依頼など、失敗する余地など微塵もないのだ。
「そうかい。マスターが言うなら信じるぜ。それじゃあ、一週間後、頼むわ。お嬢ちゃんもまたな」
「はーい! さようなら!」
アレンが安堵の笑みを浮かべながら立ち去ると、シエルは元気な挨拶と別れの言葉をかけて手を振っていた。
「……」
「ねぇねぇ、マスター」
「なんだ」
俺は裾をくいくい引いてくるシエルを見下ろして聞き返す。
「私、冗談のつもりでマスターに話を振ってみたんだけど、その知り合いの人ってそんなに強いの?」
シエルは首を傾げながら聞いてきた。
あれは冗談だったのか……。あんな真顔で何かを求めるような雰囲気でやめてほしい。
まあ、結局はこうして力を貸すことになったし、アレンが困っている姿を見たら俺は自発的に手を差し出したかもしれないな。
「ああ。断言する。誰もが認める世界最強クラスの男だ」
「そうなんだ! じゃあ安心だね!」
「任せとけ」
安心しろ。そして任せろ。
俺は胸を張って答えた。
「何でマスターが堂々としてるの?」
「知り合いを紹介するのは俺だ。つまり黒幕の悪事を暴いて白日の元に晒すのは間接的に俺になる」
「……よくわからないけど、早く黒幕が捕まるといいね! 私たちも買い出しの続きしよっか!」
シエルは俺が咄嗟に口にした適当な暴論をあっさり受け流すと、俺のことを置いて先んじて歩き始めた。
途中でアレンに会ってしまったから、買い出しはまだまだ終わっていない。
とっとと終わらせて今日の開店準備を整えるとしよう。
一週間後の営業は休みにしないといけないので、何か適当な理由を考えておく必要があるな。
一人頭の中で納得していると、突然シエルが下からこちらを見上げて聞いてきた。
「……どうして俺に振るんだ?」
「マスターってなぜか大金持ちでしょ? 知り合いにそういう人もいるのかなぁって思ったの」
「……」
一千万ゼニーをぽんっと払ってシエルを買うくらいには大金持ちだが、その返答は今の俺を困らせるには十分すぎた。
俺にそんな知り合いはいないが、一度首を突っ込んだ話をそう無碍には扱えない。
「マスター、もしもそういった知り合いがいるのであれば是非紹介してほしい。紹介金なら弾むし、今後も何かあれば冒険者ギルドは率先して依頼すると約束する」
無言で黙り込む俺の前にアレンがやってきた。
彼はまっすぐな瞳でこちらを見つめてくる。
本当に困っているのであれば助けないという選択肢はないか……。
乗りかかった船だ。本当は目立つ真似はしたくないのだが、今回だけは最後まで付き合ってるとしよう。
「……一名だけ心当たりがあります」
「本当か!?」
俺がおもむろに口を開くと、アレンは前のめりになって聞き返してきた。
パァッと表情が明るくなっていることから、相当切羽詰まっていたことがわかる。
「ええ。ですが、彼は少々強引なところがありますので、命を奪うまではせずとも無茶をしてしまうかもしれません。それでもよろしいですか?」
手加減は得意だが、少々やり過ぎてしまうかもしれない。
後、人殺しは趣味じゃないし気持ちが悪いのでやるつもりはない。
「ああ。黒幕ってのは中々に周りから嫌われているから、少しばかり痛い目に遭わせても問題ねぇぜ! それで、どこに行けば会えるんだ?」
「では、一週間後の夜半過ぎにアレン様の執務室に向かわせても宜しいですか?」
明日や明後日だと少々スパンが短すぎて相手が警戒していそうなので、あえてほとぼりが冷めるであろう一週間後に約束の日時を設定することにした。
「いいぜ。夜中でもギルドは開いてるから、受付嬢にそれらしき奴がきたら上に通すように伝えておくからよ」
「かしこまりました」
俺は恭しく頭を下げた.
「いやぁ、マジで助かったぜ。ちなみにその男は信用に足る人物なのか?」
「ええ。私が知る中で最も強い人物ですし、今は冒険者稼業を引退しているので自由も効きます。きっと望み通りの結果が得られることでしょう」
俺は嘘偽りのない情報を与えた。
公爵家の一人息子を罰する程度の依頼など、失敗する余地など微塵もないのだ。
「そうかい。マスターが言うなら信じるぜ。それじゃあ、一週間後、頼むわ。お嬢ちゃんもまたな」
「はーい! さようなら!」
アレンが安堵の笑みを浮かべながら立ち去ると、シエルは元気な挨拶と別れの言葉をかけて手を振っていた。
「……」
「ねぇねぇ、マスター」
「なんだ」
俺は裾をくいくい引いてくるシエルを見下ろして聞き返す。
「私、冗談のつもりでマスターに話を振ってみたんだけど、その知り合いの人ってそんなに強いの?」
シエルは首を傾げながら聞いてきた。
あれは冗談だったのか……。あんな真顔で何かを求めるような雰囲気でやめてほしい。
まあ、結局はこうして力を貸すことになったし、アレンが困っている姿を見たら俺は自発的に手を差し出したかもしれないな。
「ああ。断言する。誰もが認める世界最強クラスの男だ」
「そうなんだ! じゃあ安心だね!」
「任せとけ」
安心しろ。そして任せろ。
俺は胸を張って答えた。
「何でマスターが堂々としてるの?」
「知り合いを紹介するのは俺だ。つまり黒幕の悪事を暴いて白日の元に晒すのは間接的に俺になる」
「……よくわからないけど、早く黒幕が捕まるといいね! 私たちも買い出しの続きしよっか!」
シエルは俺が咄嗟に口にした適当な暴論をあっさり受け流すと、俺のことを置いて先んじて歩き始めた。
途中でアレンに会ってしまったから、買い出しはまだまだ終わっていない。
とっとと終わらせて今日の開店準備を整えるとしよう。
一週間後の営業は休みにしないといけないので、何か適当な理由を考えておく必要があるな。