「シエルから話を聞いた限り、あんたらの犯行はあまりにも手際が良すぎる。きっとこれまでに嵌めてきたのは一人や二人じゃないんだろ? 半年に一回ならバレないと思ったか? どうなんだ?」

 俺は無言で歯を食いしばるルーナを問い詰めた。

 眉間に皺を寄せて悔しそうにしており、返す言葉もないのか全く口を開く様子はない。

 だが、確かに心当たりはあるようで、こめかみには一滴の汗が滴っていた。

「協力者がいるんだろ? 初級冒険者のフリをした三人組だ。ほら、見覚えはないか?」

 俺は少し膝を曲げて背の低いルーナと視線を合わすと、彼女の眼前に一枚の紙を突きつけた。
 魔紙写によって鮮明に写し出された三人の男の素顔に心当たりがあるはずだ。

「っ……し、知らないわよ!」

 思わず反射的に紙を確認したルーナは、黒い瞳を小刻みに揺らしていた。

 明らかに狼狽えている。
 目を伏せて見ないようにしていたらしいが、やはり己に関係のある何かを突きつけられると、どうしても人は好奇心や興味で視線を移してしまうらしい。

 このまま押して吐かせてやろう。

「いつ、どこで出会った? どうやって犯行に及んだ? なぜシエルのような無害な初級冒険者をターゲットにした?」

 俺はルーナとの距離が無くなるほど詰め寄ると、間近で彼女の揺らぐ瞳をじっと見つめた。

 怯えてわなわなと肩が震えている。

 しかし、まだ口を割るつもりはないのか、俺から視線を逸らして二、三歩後退すると、大きく息を吸い込んだ。

「———助けてぇぇっ! 襲われてるのぉぉーーーーーーーー!!」

 ルーナは甲高い悲鳴をあげた。

 叫び声はそれほど響かなかったが、迷いのないその行動は確実に助けてくれる何者かを呼んでいるように思えた。

「……」

 俺は無言で呆れてしまった。
 全く、面倒なことをしてくれる。
 そんなことをしても無駄だというのに。

「あんたみたいな弱そうな奴なんて、あっという間にやっつけてやるんだから!」

 何も口にしない俺が怯えているのだと勘違いしたのか、ルーナは打って変わって得意げな様子で指を差してきた。

 その瞬間、背後からドタバタと複数人の足音が聞こえてくると、そこには見覚えのある三人組の男たちが立っていた。

「ああ……都合が良いな」
 
 俺は思わず笑みを浮かべて呟いた。