ここは王都から程近い街———スイセイの郊外。
辺りに誰もいない静かな草原で俺は見知った男に胸ぐらを掴まれていた。
時刻は夜。陽の光はすっかり沈み、夜の帷が下りている。
「スニーク、てめぇはどうしてそんなに強情なやつなんだ! リーダーの言うことが聞けねぇってのか!?」
眼前で叫ぶ男の名前はルウェスト。
俺が所属するSランクパーティー『皇』のリーダーだ。
「……何度言ったらわかる。俺の魔法は人々を陥れるためのものなんかじゃない。困っている人々を救うためのものだ」
俺は視線を外すことなく堂々と答えた。
いくら戯言を叫ばれようと、俺の意思は揺るぐことはない。
「あぁ!? モンスターに放つ魔法をわざと外して、あの村に逃げたモンスターをけしかければ、財宝は全て俺様たちの物だったんだぞ! クソがッ! 勿体ねぇ真似しやがって!」
ルウェストは力任せに俺のことを突き放すと、苛立ちを隠すことなく地面に痰を吐き捨てた。
相変わらず傍若無人な性格だが、ここ最近はより一層磨きがかかっている。
剣の腕前だけ見れば有数の実力者なだけに、その性格は非常に勿体無く思う。
「俺は正しい判断をしたつもりだ。何か文句があるのなら受けて立とう」
俺は乱れたローブを軽く整えると、再びルウェストと視線を交わして向き合った。
彼はそんな強気な俺の態度が気に入らなかったのか、こちらを睨みつけながら舌打ちをする。
「スニーク、てめぇは今日限りでパーティーから脱退してもらう! 追放だ!」
「……」
「何も口答えをしないということは、追放を受け入れるという事で良いのか?」
何も言い返すこともなく、あっさりと追放を受け入れた俺を見てルウェストは少し驚いていたが、特に言及するつもりはないようだ。
「それで構わない」
「ふんっ……なら、有り金を置いてとっとと俺様の前から消え失せやがれ!」
ルウェストは俺が腰から下げる麻袋を丸ごと奪い取った。中には端金が入っている。
本当はその僅かなお金も渡したくないのだが、ここで抗ってしまえば計画が全て台無しだ。
「チッ。世界最強の賢者様が持ってる金はこんだけかよ。んじゃ、二度と俺たちに干渉するんじゃねぇぞ? わかったか?」
ルウェストは俺の所持金の少なさにぶつくさと文句を垂れたが、特にそれ以上は何を言うわけでもく立ち去っていった。
一目でわかるほどの横柄な歩き方は、その強気で身勝手な性格を見事に体現している。
「……やっと追放されたか」
ルウェストの姿が見えなくなると同時に、一人取り残された俺はポツリと呟いた。
正直、無害な人々を犠牲にしたり、私利私欲に囚われたルウェストのやり方には飽き飽きしていたので、特に寂しさや悲しさは感じていなかった。
ソロで活動していた俺の実力を買って、パーティーに誘ってくれたのは嬉しかったが、まさかここまで酷い手段で成り上がってきたとは思わなかった。
本当はもう少しSランクパーティーに所属して活動しても良かったが、流石にもう我慢できない。
数ヶ月程度の短い期間だったが、ルウェストと共に過ごしたせいで精神が疲れた。
何の罪もない俺以外の二人のパーティーメンバーには悪いが、お先にこの悪環境から離脱させてもらう。
「いっそのこと、もう冒険者なんて引退するか」
ふとした拍子に決意した。この機会に冒険者なんて辞めてしまおう。
幼い頃から抱いていた夢は二つあったが、Sランクパーティーに所属したことでそれは既に叶ったし、もう未練は何も無い。
この追放は僥倖だったと考えよう。
追放されたことによって、ずっと憧れだったもう一つの夢を叶えることができるのだから。
「……まずは王都に行くか。瞬間転移」
俺は密かに夢の準備を進めていたので、それを叶えることができる王都へ向かうことにした。
辺りに誰もいない静かな草原で俺は見知った男に胸ぐらを掴まれていた。
時刻は夜。陽の光はすっかり沈み、夜の帷が下りている。
「スニーク、てめぇはどうしてそんなに強情なやつなんだ! リーダーの言うことが聞けねぇってのか!?」
眼前で叫ぶ男の名前はルウェスト。
俺が所属するSランクパーティー『皇』のリーダーだ。
「……何度言ったらわかる。俺の魔法は人々を陥れるためのものなんかじゃない。困っている人々を救うためのものだ」
俺は視線を外すことなく堂々と答えた。
いくら戯言を叫ばれようと、俺の意思は揺るぐことはない。
「あぁ!? モンスターに放つ魔法をわざと外して、あの村に逃げたモンスターをけしかければ、財宝は全て俺様たちの物だったんだぞ! クソがッ! 勿体ねぇ真似しやがって!」
ルウェストは力任せに俺のことを突き放すと、苛立ちを隠すことなく地面に痰を吐き捨てた。
相変わらず傍若無人な性格だが、ここ最近はより一層磨きがかかっている。
剣の腕前だけ見れば有数の実力者なだけに、その性格は非常に勿体無く思う。
「俺は正しい判断をしたつもりだ。何か文句があるのなら受けて立とう」
俺は乱れたローブを軽く整えると、再びルウェストと視線を交わして向き合った。
彼はそんな強気な俺の態度が気に入らなかったのか、こちらを睨みつけながら舌打ちをする。
「スニーク、てめぇは今日限りでパーティーから脱退してもらう! 追放だ!」
「……」
「何も口答えをしないということは、追放を受け入れるという事で良いのか?」
何も言い返すこともなく、あっさりと追放を受け入れた俺を見てルウェストは少し驚いていたが、特に言及するつもりはないようだ。
「それで構わない」
「ふんっ……なら、有り金を置いてとっとと俺様の前から消え失せやがれ!」
ルウェストは俺が腰から下げる麻袋を丸ごと奪い取った。中には端金が入っている。
本当はその僅かなお金も渡したくないのだが、ここで抗ってしまえば計画が全て台無しだ。
「チッ。世界最強の賢者様が持ってる金はこんだけかよ。んじゃ、二度と俺たちに干渉するんじゃねぇぞ? わかったか?」
ルウェストは俺の所持金の少なさにぶつくさと文句を垂れたが、特にそれ以上は何を言うわけでもく立ち去っていった。
一目でわかるほどの横柄な歩き方は、その強気で身勝手な性格を見事に体現している。
「……やっと追放されたか」
ルウェストの姿が見えなくなると同時に、一人取り残された俺はポツリと呟いた。
正直、無害な人々を犠牲にしたり、私利私欲に囚われたルウェストのやり方には飽き飽きしていたので、特に寂しさや悲しさは感じていなかった。
ソロで活動していた俺の実力を買って、パーティーに誘ってくれたのは嬉しかったが、まさかここまで酷い手段で成り上がってきたとは思わなかった。
本当はもう少しSランクパーティーに所属して活動しても良かったが、流石にもう我慢できない。
数ヶ月程度の短い期間だったが、ルウェストと共に過ごしたせいで精神が疲れた。
何の罪もない俺以外の二人のパーティーメンバーには悪いが、お先にこの悪環境から離脱させてもらう。
「いっそのこと、もう冒険者なんて引退するか」
ふとした拍子に決意した。この機会に冒険者なんて辞めてしまおう。
幼い頃から抱いていた夢は二つあったが、Sランクパーティーに所属したことでそれは既に叶ったし、もう未練は何も無い。
この追放は僥倖だったと考えよう。
追放されたことによって、ずっと憧れだったもう一つの夢を叶えることができるのだから。
「……まずは王都に行くか。瞬間転移」
俺は密かに夢の準備を進めていたので、それを叶えることができる王都へ向かうことにした。