次から次へと言葉が飛び出す。

「幼稚園のときから、ゆかりと一緒にいるのが、すっごくイヤだった。だから引っ越したとき、これで振り回されずに済むとホッとしたんだ。死んだときだって同じだ。涙は出たさ。でも心の中でホッとしていたんだ。二度と会わないで済むって」

 指輪の箱、手に取る。床に叩きつけるつもりだった。

 「死んでから僕を振り回すな! ゆかりなんかもう関係ない! 大キライだ! 大キライだ!」

 指輪の箱のフタ、もう一度開けた。ダイヤモンドがキラキラ光っている。
 ダイヤモンドの光の中。
 ゆかりがニーッて意地悪く笑いながら僕に握らせた切符……。
 ゆかりがニーッて意地悪く笑いながら僕に握らせたお菓子……。
 ゆかりがニーッて意地悪く笑いながら僕に渡したマンガ……。
 ゆかりが二ーって意地悪く笑いながら僕にくれたバースディプレゼント……。
 ゆかりが二ーって意地悪く笑いながら僕にくれたクリスマスプレゼント……。
 ゆかりが二ーって意地悪く笑いながら僕にくれたバレンタインのチョコレートケーキ……。
 ぜんぶ見えた。ハッキリ見えた。
 ゆかりが僕にくれたものって、ぜんぶ、僕が行きたいところばかりだった。ぜんぶ、僕が欲しかったものばかりだった。
 涙が一気に噴き出した。
 ベッドに突っ伏した。声を出さないようにしようってした。
 だけどだめだった。心の中の想いをぜんぶ吐き出して、ずっと泣いた。
 ゆかりに会いたい。会いたくてたまらない。・
 大好きだったチョコレートケーキをもらった。指輪をもらった。
 だけどゆかりはもういないんだ。 

 遠くでスマホが鳴っていた。ものすごく遠くで……。