高校一年のバレンタイン。
 放課後、秋月さんや竹内さん、友人の丸山くん、笹岡くんとカラオケに行った。全員が進学コースのクラスメイト。
 帰ったら、ゆかりの名前でチョコレートケーキが届いていた。
 率直に感動した。でも去年とは違っで、泣いたりはしなかった。秋月さんから電話が入ったので、ケーキのそばでずっと話しをした。


 高校二年のバレンタイン。
 放課後に、秋月さんとスィーツ専門店に行った。
 帰ったら、今年もゆかりの名前でチョコレートケーキが届いていた。スィーツ専門店のチョコレートケーキより美味しかった。
 

 高校三年のバレンタイン。
 放課後、秋月さんと一緒に校門を出た。ふたりとも別々の大学に推薦入学が決まってた。

「バレンタイン、遊びに行けなくてごめんね」

 歩きながら秋月さんが言った。

「ちょっと残念だけど、秋月さんは用事があるんでしょ」
「パパが帰ってくるの。青森へ単身赴任中って知ってるでしょ。それで、どうしても相談したいことあるの」

 秋月さんが、真剣な表情を向けてきた。

「佑くんにね。両親に会ってほしいの」

 ちょっとだけびっくり。でも前からそんな話は少ししていた。
 
「一度、みんなで会う機会をつくりたいの」
「いいけど、それ早くない?」
「大学は違うし、いまのうちに少しは将来のこと、相談したっていいでしょ」 
「分かった。僕はいいよ」
「日程決まったら電話する。夜電話できるって思う」

 途中の信号交差点で秋月さんと別れた。