高坂先輩は動揺した表情でたどたどしく答えます。

「俺はいつだって厳しいことを言いすぎちまう。それなのにそこまで俺を慕ってくれていたなんて……。そんな根性のある女性は君ぐらいなものだ。だから、もしよかったら――」

悲しいと、嬉しいと、恥ずかしいがいっぺんに襲ってきて、涙がとめどなく溢れ続けます。こうなったら枯れるのを待つほかありません。

「ひーん、ひーん……」

泣きながら、いつかにきび様が言っていたことを思い出します。

『真摯な努力というものは、予想外の恩恵をもたらしてくれることもあるものじゃ。たどりつけばわかるじゃろう』

ひょっとしたら、今がその時なのかもしれません。

にきび様がいらしたひたいに手のひらを当て、わたしは高坂先輩の問いかけに答える決心を固めたのです。

「高坂先輩、聞いてください。わたしだって、これからも――」

――まっさらな顔で前を向け、わたし。

おでこのにきび様の笑顔が、今でも鏡の向こうに見えそうな気がします。

【了】