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朝井梨央さん

突然のお手紙をお許し下さい。
朝井さんがこの手紙を読んでるということは、俺は多分もうこの世にはいません。
俺は今、悪性リンパ腫という病気で入院していて。医師からは余命半年と宣告されました。その宣告を受けたのが、高二になってすぐのこと。
俺は、高一の頃から朝井さんのことがずっと好きだったから。高二でやっと朝井さんと同じクラスになれて。これから君に俺のことを好きになってもらえるように頑張ろうと思っていた矢先のことだった。
こんな余命宣告された俺が、朝井さんを好きでいてはいけない。でも、この気持ちを簡単に消すことはできなくて。
だから俺は、君に嫌われて振られてしまえば良いのだという考えに至った。それで俺は、朝井さんに何度も嘘をつきました。
俺が朝井さんに好きだと伝えても、嘘だと思ってもらえるように。俺のことなんか、大嫌いだと言ってもらえるように。そうしたら、この気持ちにもきっと諦めがつくからって。
だけど、こんなことをして最低だよな。俺は、好きな女の子を泣かせてしまったのだから。俺は、朝井さんの優しい笑顔が何よりも好きだったのに。俺は君を怒らせてばかりだった。
今更こんなことを言っても信じてもらえないかもしれないけど、俺は本当に朝井さんのことが好きだった。そして今まで何度も嘘をついて、君に嫌な思いを沢山させてしまってごめん。
あのまま朝井さんに謝罪もせずに、別れたまま死ぬのは嫌だったから。だけど俺はもう病院から出ることはできないから、こうして手紙を書いて汐野に託しました。
こんな自分勝手な俺で本当にごめん。
そして最後に、朝井さんのこれからの毎日が俺の大好きな笑顔で溢れることを祈っています。

八神朔夜

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