「見てください、皆さん。この青空のグラデーション。まるで本物の空を切り取ったようですね」

 三十人ほどの児童の前。
 図工の先生が手本として掲げたのは、颯馬の絵。

「雲の描き方も、お見事です。筆圧により薄い部分と濃い部分を上手に描き分けており、雲が持つ透明感を明確に表すことができています」

 そこかしこから聞こえ始めたのは、拍手と称賛の声だった。

 颯馬くんって、絵上手だったんだね。
 まるで本物の空みたい!
 わたしもそんな絵描いてみたいな。どうやって描くの?

 耳にして、虫唾が走った。
 何故なら先ほど俺の心を満たしたばかりの言葉の数々が、全て颯馬のものになったから。