「おめでと、颯馬。さすが来年にはニューヨークの美大に進学するって豪語してるだけあるわな。お前なら絶対に、受かるっしょ」
抑揚ひとつない、下手な朗読のような言い方だった。
パンツポケットに両手を突っ込んで首を傾けた俺は、横顔だけでふっと笑った。
今はお前の目を、見られない。だって傷ついてしまったから。
古びた校舎の艶なき廊下。
小さな埃が、夏めいた風に吹かれて舞っている。
「ありがとう、咲也」
開け放たれた窓の向こう側からは、野球部の連中の、威勢の良い声が響いていた。
カキンと誰かがボールを打つ音。そこに重なる、颯馬の声。
「でも咲也がいたから、俺はこうして絵を描いているんだ。だって俺は、咲也がきっかけで絵を始めたんだから」
抑揚ひとつない、下手な朗読のような言い方だった。
パンツポケットに両手を突っ込んで首を傾けた俺は、横顔だけでふっと笑った。
今はお前の目を、見られない。だって傷ついてしまったから。
古びた校舎の艶なき廊下。
小さな埃が、夏めいた風に吹かれて舞っている。
「ありがとう、咲也」
開け放たれた窓の向こう側からは、野球部の連中の、威勢の良い声が響いていた。
カキンと誰かがボールを打つ音。そこに重なる、颯馬の声。
「でも咲也がいたから、俺はこうして絵を描いているんだ。だって俺は、咲也がきっかけで絵を始めたんだから」