「あーあっ。また颯馬(そうま)のやつが入賞か…」

 俺がそう嘆いたのは、とあるコンクールの結果発表を受けて。

 今回は、市の教育委員会で開催している写生大会で、入賞すれば表彰はもちろんのこと、自分の描いた絵を人目につくところに飾ってもらえるし、トロフィーだってもらえるしで、羨むことしかない。

 ちっと軽く上顎を舌で(はじ)き、俺は美術室をあとにする。

「おい、咲也(さくや)。どこ行くんだよ。まだ部活、終わってないぞ」

 ひとりきりになりたいから廊下に出たって、そんなこと考えずとも想像つくだろうに、空気の読めない幼馴染は、そんな俺を呼び止めた。

「なに」
「なにって、咲也が急に出てくから」
「…だから、なに」
「だからええっと。追いかけに」

 たった今、十数人いる部員の中でお前の名前だけが出て。
 たった今、顧問からお前だけが讃えられて。
 たった今、俺はショックを受けたというのにもかかわらず、そんな俺を、わざわざ追いかけに来たというお前。

 背中へ放たれる声を全て蹴り飛ばし、青空の彼方へ葬りたいとふと思う。

 放っておいてほしかった。
 俺は颯馬に気にかけられる度に、どんどん惨めになっていく。