「その先……」

 このタイトルとこの絵を通じて颯馬が伝えたいことは、説明なくとも感じてとれた。

『その先』とは、空の向こう側にある宇宙のことを意味しているのではなく、前進を意味しているんだってこと。

 目指している場所があるなら、自信と希望を持って突っ走れ。

 俺は俺の横顔に、そう言われた気がした。

 大好きな絵。
 大好きだから描いていたのに。
 描いて描いて描き続けるうちに欲が出て。
 人と比べ、報われないことに苛立って。
 ついには(さじ)を投げる始末。

 俺の初心はどこにいったんだよバカやろう。

 美術館を飛び出した俺は、暇つぶしだとか言ってしれっと嘘をついた幼馴染に電話をかけた。

 ニューヨークの絵は、やっぱり完成間近だったんだ。
 それなのにあいつはまた、その絵を途中で放り投げたんだ。

 俺も咲也みたいに絵が上手になりたいっ!

 その時思い出したのは、小学校での図工の授業。
 あの時も、そして今も颯馬が見せてくれる輝かしい瞳を、俺もまた作りたい。