「え……?」

 夢に溢れた、煌びやかなニューヨーク。

 そんな絵しか想像していなかったものだから、美術館に足を運んだ俺は度肝を抜かれた。

 四角い枠の中、高層ビルなど一棟も見当たらない。見当たるのは、見覚えのある顔。

 思わず一歩近付いた。しかし一歩だけでは物足りず、二歩三歩と歩み寄る。

 目の前にある立派な絵画。そこに描かれているものは、あの日の俺の横顔だった。

 颯馬に連れて行かれた屋上で久しぶりに空を描いた日は、楽しくて楽しくて仕方がなかった。大好きな空を描く手が止まらずに、心が弾んだ。

 絵の中にいる俺は、空のその先を見つめていた。

 自信に満ちていた。
 希望に満ちていた。
 大きな夢を、膨らませていた。

 絵の中のスケッチブックには、俺が描いたあの日の空。
 俺より上手いじゃんか、と刹那羨み、そのまま視線を下へとずらす。

 そうだ、その先へ行こう。

 颯馬がつけたこの絵画のタイトルに、胸をうつ。