十一月も終わりに近付いてきたが、空はまだまだ秋模様。

 快晴の今日、ひつじ雲は浮いていないけれど、空気中の水分やチリが少ないから、太陽光線の青や紫が届きやすく、空がより一層青く見える。

 高く、高く、どこまでも澄んだ空。
 乾いた風が、ゆるりと頬を撫でていく。

 天まで突き抜けるような真っ青な空だけれど、その中には色々な青が存在している。

 水色に(あま)色に、勿忘草(わすれなぐさ)のような明るい青。
 上の方に行けば行くほど、濃い紫味を帯びた群青(ぐんじょう)色や深みのある瑠璃(るり)色になっていて、見れば見るほどに、その先の宇宙を思わせる。

 宇宙からは、この地球がどう見えているのだろう。
 銀河系のさらにその先には、なにがある?
 広すぎるその世界のどこかにいる異星人よ、そろそろご対面しようじゃないか。

 俺が空を愛してやまないのは、きっとこんな妄想に(ふけ)られるから。
 決して手の届かない空を描き、側に置いておくことで、空を少し手に入れた気分になる。

 颯馬に己の肖像画を描かれていることもすっかり忘れて、俺は夢中になって空を描いた。

 久しぶりに楽しかった。
 こんな気持ちはご無沙汰だった。

 青かった空が段々と、西から茜色に染まる頃。
 充足感に満ちた俺が色鉛筆から手を離すと、颯馬も満足げに笑んでいた。