ゴシゴシとデッキブラシを動かしながら、俺はまた道を行く。祐樹と泰造のやつ元気かな、とあいつらの顔が頭に()ぎれば、ここ最近俺がとった態度を反省した。

 もぬけの殻だった、誰とも会いたくなくなった。だから俺は奈美の葬式にだって行かなかったし、泰造たちが心配して寄越してくれたメッセージも全部シカトして、仕事を辞めて実家に戻った。

 園児と散歩中に車が突っ込んだ?子どもは歩道を歩いていただけだぞ。そして奈美は、引率していただけなのに。

 奈美の死は俺の世界をぐにゃりと曲げて、『人生』という名の険しき道を、さらに複雑なものにした。1歩だって歩むことすら怖くてできない、闇にも似た道。心の支えだった友が欠けることは、相当なダメージを受けるのだと思い知らされた。

 でも、それでも生きている限りは歩まねばならない道だから、俺はずっと途方に暮れている。
 足は(すく)みっぱなしでがたがた震えているし、最近の俺は道の真ん中に突っ立って、息を吸って吐いているだけだ。