「どーいうことだ……?」

 橋の下へ手を伸ばせば、容易に届く水面(みなも)。掴んだ船を開いてみれば、同姓同名の誰かのものとかではなく、本当に、俺の答案用紙そのものだった。これをこの小川に流してからは、二十数年が経っている。確かこの船はマナーの良い奈美が、「川が汚れる」とか言って怒り、(すく)い上げていたが……

「奈美?」

 ふと、人の気配がして後ろを振り向く。しかしそこに人影はなし。俺は自嘲気味に笑う。

「はは、んなわけないよな。奈美はとっくに天国だっつの」

 担任から0点の答案用紙を返されたあの日のことは、俺にとっては苦い思い出。けれど奈美を含めた幼馴染みの3人がずっと俺に付き添ってくれたことは嬉しかったし、なんだか今思い出したら、心が温まった。