「いやいやいや、この線どこまで続いてるんだよ……」

 住宅街を抜けた大通り。真っ直ぐなその道に出ても、落書きの終わりはまだ見えない。ちっと軽く舌を打った俺は「ついてねえ」を連呼して、白線を辿って歩かされる。

「一体誰がやったんだよ、見つけたらタダじゃおかねえぞ」

 アスファルトに吐いていく、愚痴の数々。人生は悲劇だと、今日も改めて思い知らされた。

 奈美(なみ)だって、保育士にさえならなきゃあんなことには……

 ふと、笑顔の奈美が脳裏を掠め、またもや無意識に弾かれる上顎。
 思い通りにならぬ『人生』という名の険しき道。生まれた時からそんな道に俺たちを立たせて、神は一体何を楽しんでいるのだろう。