それから数分後。白線は、とある丘のふもとへ辿り着くと途絶えた。緑が多く、空気が新鮮な場所。肺を存分に広げ、深く息を吸って、丘の上を見上げる。

「よう洋太、やっと来たな」
「おせーよまじで。どんだけちゃんと掃除してんだよ。清掃会社にでも再就職しろ」

 最終目的地はどこだと途中から予想はついていたが、俺は母に言われた通りきちんと白線の落書きを消しながら、ここまでやって来た。

 だって怒ると怖いから、うちの母さん。

 デッキブラシとビニール傘を芝生に横たえた俺は、ゆっくり木の下へと()を進めた。

「祐樹、泰造……」

 きらきらと光る木漏れ日の中、馴染みの顔が俺を見下ろす。穏やかな表情だけれど、呆れているようにも見えた。

「この約束破り」
「ご、ごめん」
「許すかばーか。昨日いつまで待っても洋太が来ねえから、俺と泰造とで掘り出しちまったぞ、タイムカプセル」

 思い出を詰めたタイムカプセル。それは高校を卒業と共にこの町を出ることが決まっていた奈美が、4人で埋めようと言ってくれたものだった。