俺は、清掃会社にでも就職した方がいい。

 そう思ったのは、それからすぐのこと。今度の俺は、小太り店員に促されるわけでもなく、まわりの視線が全身に突き刺さったわけでもないのに、大人しく白線を消し始めたのだから。

 ゴシゴシゴシゴシ。

 一体何なのだろう、この白線。もしかして新種の生物(せいぶつ)だったりして。

 消せど消せど現れる不思議な線に、ファンタジーの世界にでも巻き込まれたのではないかと考え始める始末。しかしこれは現実だ。だから少々気味が悪い。

 白線と俺の追いかけっこは続く。次はなんだ、お前は俺をどこへ連れて行く。

 自宅の玄関前から始まって、レンタルビデオ屋にコンビニ。そしてその間にはあの小川。だから俺は、次の目的地が気になった。馴染み深い場所へとばかり(いざな)うこの線の、新たな行方が。俺の目は、もうこの白線だけにロックオンだ。

 掃除に勤しみながら小道に入り、角を曲がった時だった。足に感じた違和感と共に、バシャンと大きな音がした。