「雨かよ、こんなにいい天気なのに」

 コンビニの前、矢印に形を変えた白線にまたもや「ここに入れ」と言われたかと思ったら、突如天気雨に見舞われた。帰宅するにしても、家まで30分はかかるだろう。白線に導かれるようにして入店した俺は、傘を1本購入した。が。

「は!?ふっざけ!止んでるし!」

 会計を済ませている間のたった数十秒で、なんと雨は止んだ。青い空を見上げて睨んだ俺が思い出すのは、またしても昔のこと。

 そういやこんなこと、前にもあったな……

 それは高校生くらいの時だったろうか。今日のように突然降ってきた雨に、4人で避難したこのコンビニ。それぞれ1本ずつの傘を買えばいいのに、祐樹が「ジャンケンで負けたやつが4本買おう」だなんて提案してきて、それで俺は見事に負けて。

“くっそー、ついてねえ。始めっからやり直し!”

 と抵抗したけれど、それは無論、認めてはもらえなかった。だけど奈美は。

“わたし、洋太と相合傘してあげよーか?そしたら1本分代金浮くでしょっ”

 と笑顔で申し出てくれて、俺は正直ドキッとした。

 相合傘、奈美とふたりで相合傘。舞い上がったけれど、俺は素直じゃなかったから。

“いや、いいよ。4本買う”

 そう言って、結局お金も逃し、奈美と近付く機会も逃した。