高校生活2日目にして、オリエンテーション宿泊研修初日。朝からジャージで登校した私達は、1時間ほどバスで揺られながら宿泊施設へ向かった。

荷物をそれぞれの部屋へ置くと、すぐに体育館のような場所に集められ、入学式と代わり映えしない話が始まる。
開始から30分も経っていないのに、退屈なことこの上ない。

「バスで爆睡だったね」

密かに聞こえてきた声は、隣に座っていた爽やかイケメンくんのものだった。

私と同じく、委員決めで白紙を引いた人。名前は――――何だっただろうか。

「あ……っと、見られてた?」
(カナメ)が隣で寝ちゃったから、他のヤツと話してたときにチラッとね」

末広な二重の、親しみやすそうな瞳が後ろへ流れる。つられた先で目が合ったのは、両サイドを刈り上げた黒髪の男子生徒だった。

「……かなめ、くん?」
桐谷(キリタニ)要です」

ペコリと会釈した彼を見て、私も慌てて頭を下げる。

「あ、椎名芙由です」
「うん、知ってる。(ミナミ)がそう言ってた」

そうだミナミくん! 白紙の爽やかイケメンくんは、南くんだ。

「南くんと要くんは同中なの?」

要くんのナイスアシストを心の中で称賛しながら、自然に南くんの名前を呼ぶ。あたかも初めから知っていたかのように。

「オレと要は、中学ってか小学校から一緒。な!」

再び後ろへと向けられた視線に、要くんが無言のまま頷く。

「へぇ、じゃあ私とカンナと同じ感じだね」