1ヶ月前、教授からオーディションを進められた。
「今のシオンさんにぴったりよ!このオーディション知って、真っ先にあなたに受けてほしいと思ったの!」
なんて言っていた。オーディションのチラシを見る。好きな相手に恋焦がれる乙女の役。あの人はどれくらい私たちのことに気づいてるんだろう…。怖いので考えるのをやめた。相変わらず不思議な人だ。

オーディション会場についてから、髪を結ぶ。お守りの髪飾りは今日も私に力を貸してくれるかのようにキラキラ光っている。そして、目を瞑って上を向き、深呼吸。
私は役を想像する。大好きで、追いかけたくって、その人に焦がれて…。自分が大好きな人の笑顔を思い出す。緊張が程よくほぐれる。大丈夫。その感情を私は知っている。オーディションが始まる。
「エントリーNo.32番、鈴鹿 紫苑です。」

後日、オーディションの結果を報告しに稽古場に行った。教授や先輩たちが、私の到着に気づき、稽古場の真ん中へ引っ張っていく。そこには誰よりも会いたかった人がいた。
「幸助先輩⁉︎」
「紫苑ちゃん、久しぶり!」
彼は両手いっぱいの紫苑とラナンキュラスの花束を持っていた。