遥が見つけて欲しい人というのは、きっと俺のことだ。
自意識過剰かもしれないが、謎解きが好きでSNSをやらないというのは自分に当てはまり過ぎている。
遥を見つけたのならば俺がやることは1つ。
遥に会いに行くことだ。居場所は動画内に隠されていると言っていた。ならば、俺はその謎を解くしかない。
居場所はきっと1番最初の動画にヒントがあるはず。遥は俺がこの動画を見つけたら1番古い動画まで遡ると分かっているだろうし。
俺は涙を拭って、先程の動画の説明欄を見てみた。すると、やはりそこに謎は隠されていた。
【学年一美人な女の子】+【☀️+🌙】+【病院】
なんだこれ……?
学年一美人な女の子……太陽の絵文字……月の絵文字。
この謎が解けたら遥が入院している病院が分かるんだろう。
確かにこれは俺と遥しか分からないような問題だ。
学年一美人な女の子と言えば、引っ越す前に遥から告白を断ったことを説教されたな。確か名前は有田さんだった。
月はそのままだとしても、有田さんの名前と太陽の絵文字はどちらかの漢字を当てはめるのか?
有太月病院……田陽月病院……いや、違う。
そもそも太陽の絵文字は太陽として捉えていいのだろうか。
太陽の他に言い方があるとするのならば……光……お日様……。そこでピンと閃いた。もしかしてと思い、俺はすぐに机からノートを取り出して広げるとメモを書いていく。
有田さんの有、太陽の絵文字は日、月の絵文字は月。
日と月を合わせて漢字に直すと【有明病院】になる。
遥が引っ越したのは隣町だ。急いで自分のスマホを開いて【有明病院】で検索すると、隣町に有明病院があるという検索結果が出てきた。
ビンゴだ。早く……早く会いに行かねえと遥が待っている。
「ごめん!俺、午後からサボるわ!スマホありがとな!」
「あ、お、おう」
友達にスマホを返して俺はカバンを肩にかけると勢いよく教室から飛び出した。
ひたすら地面を蹴って、必死で足を動かす。街ゆく人が振り返って俺を見ているけれど今はそんなこと何も気にならない。
なぜなら、頭の中は遥のことで埋め尽くされているからだ。
『んじゃあ、俺がいつかお前に謎解きゲーム作ってやるよ』
いつか、遥がそう言っていたことをふと思い出した。
まさか本当に考えてくれていたなんて。でも、なんで病気のこと言ってくれなかったんだよ。俺は何も知らずに連絡もしてこないまま音信不通になったお前に少し怒っていたんだ。最低なのは俺だった。お前は一人で苦しんでいたのに。助けてやれなかった。そばにいてやれなかった。どれだけ悔やんでも時間は戻らない。だから、俺は今お前にこの足で会いに行くんだ。