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四ヶ月後、俺は晴れて高校一年生になった。
だけど、高校の入学式に遥の姿はなかったのだ。
どこのクラスを見ても、誰に聞いても、俺の世界を照らす太陽には出会えなかった。
遥は俺と離れたかったのか。親友だと思っていたのは俺だけだったのだと酷くショックを受けたのは言うまでもない。
遥が引っ越してすぐは会ったりはしなくても連絡は取っていたのに一ヶ月程が経つと、遥はスマホを変えたのか連絡先がいつの間にか消えていて連絡を取る手段もなくなり、あれだけ仲が良かった俺たちはすっかり疎遠になってしまった。
最後に遥の姿を見たのは中学卒業前に友達が遥のSNSの投稿を見せてきた時だ。確か制服を着て卒業証明書と花を持って太陽のような笑顔を浮かべて写真を撮っている写真だった。あれ以来、俺は遥の姿を見ていない。
遥がいなくなって俺の毎日は輝きを失っていたけれど、高校で新しい友達もできて、なんとなく遥の存在が俺の中でも薄れてきたある日、クラスメイトにスマホの画面を見せられた。
「なあ、小日向。今話題になってるコレ知ってる?」
「んだよ」
俺は相変わらず、謎解きゲームをしていて内心面倒くさいなと思いながらもチラリと見せてきた画面へ視線を移した。
友達が見せてきたのは短い動画を載せたりできるアプリの中の動画の1つで、その動画を見た瞬間、俺は目を大きく見開いて思わず画面に顔をずいっと寄せた。
「お、小日向が珍しく反応した。今この人が自分のことを見つけてほしい人をみんなで探して会わせてあげようって拡散されてんだぜ。まあ、今どきSNSやってねえやつとかレアだからなー。ってお前もやってなかったな。悪い悪い」
普段は何を見せられても無反応な俺が反応したことを嬉しく思ったのかペラペラと話題になっている理由を話してくれているけれど、俺が反応した理由はそこじゃない。その動画に映っていた人物に反応したのだ。
俺はプレイしていた自分のゲームなんて放置して、ただただ画面に見入る。
顔は映っていないけれど、声や仕草だけで俺はその人物が誰なのか分かった。
―――遥だ。
でも、どうして遥が?なんのために?
そんな疑問を抱きながら今まで動画に映っている人物にしか目がいっていなくて見落としていたアカウント名を確認して俺は呼吸を止めた。
「……SNSをやらない親友に死ぬまでに発見してもらえるか」
ぽつり、と読み上げた声は心なしか震えていたような気がする。
なんだよ、これ。どういうことだ?
死ぬまでってどういうことなんだ。
遊びでこんなことをやるようなやつではないことは俺が一番よく知っている。