それは、あまりにも突然だった。

「俺さ、来週引っ越すんだよね」

「……は?」

親友の(はるか)の口から出た言葉に俺、小日向碧(こひなたあおい)は動揺を隠せず、驚きの声が洩れた。
いや……嘘だろ?
何が何でも来週って急すぎねえか?心の中で声にならない思いが頭の中でいくつも巡る。
俺と遥は中学1年の時に同じクラスになったのがきっかけで話すようになり、二年が経った今では大親友になっていた。俺たちはいつもセットで周りからは“アオハル”とコンビのような愛称で呼ばれているくらい仲が良く、今日だって放課後いつものように二人で学校の近くのコンビニで適当にお菓子を買ってその足で俺の家でゲームをしていた。そんな日常がこれからも当たり前に続くと思っていた。だけど、今の一言で俺の安易な考えは一瞬にして崩れ去った。

「言うの遅くなって悪かったな」

少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべながら遥は言った。

「いや……突然すぎるだろ。つーか、なんでこんな時期に?」

今は12月。こんな時期に転校なんてありえるのか?
俺たちはあと数ヶ月後に受験を控えていて、高校だって同じところに行こうって言っていたくらいなのに。

「急に親の転勤が決まってさー、ほんと勘弁してほしいわ」

なんて、笑いながら不自然なくらい明るい声で言う遥の目には薄く涙の膜が張っており、俺はそれに気づかないフリをした。
そうだよな。俺なんかよりも地元から離れないといけない遥の方が辛いに決まっている。親の転勤なら仕方ない。俺たちは大人についていくことしかできないのだから。

「そっか。んで、どこに引っ越すんだよ」

「隣町」

「隣町なら同じ高校行けるんじゃね?」

高校が一緒になれば、少しの間だけ辛抱したら俺らはまた元に戻れるじゃん。俺の遥の学力は少し差があるけど、俺が偏差値を下げればいいだけの話だし。

「どうだろ。まあ、とにかく頑張るわ」

だけど、確定的な言葉は口にはせずに曖昧にして笑った遥。

「おー、頑張ろうな」

はぐらかされたか?と疑問に思いつつも俺は特に気にすることもなくスマホへと視線を落とした。
しばらくの沈黙の後、隣から呆れたような声が聞こえてきた。

「お前ほんと謎解きゲーム好きだよな」

「うん」

俺はスマホで謎を解くアプリをダウンロードしていて、暇さえあればずっとそれをプレイしている。遥は敵を倒していくようなゲームをしているから俺たちは一緒にいても対戦などはしたりしない。単純に居心地がいいからいつも一緒にいるのだ。