その後気になった私は少女の行方を探したが、結局どこにも居なかった。近くの席に居た顔の大半を蔦と花に覆われた人と、身体全体に根が張った人に聞いてみても、見ていないと言う。
「……エマさん。さっき、何で止めたんですか?」
「あら、ごめんなさいね。手、痛かった?」
「いえ、それはいいんですけど……」
はぐらかすようなその対応に、釈然としなかった。新しく紅茶を淹れてくれるエマさんは、何か知っていそうなのに核心には触れさせてくれない。
「さあ、探し回って疲れたでしょう? 冷めない内にどうぞ」
「ありがとうございます……」
促されるまま私は席に着き、紅茶を口に含む。
まだわからないことだらけなのに、こんな風に躊躇いもなくお茶会を続ける自分に、皆と同じように順応し始めているのだと気付き怖くなった。
「エマさんはあの子が消えた瞬間、見ましたか?」
「……いいえ? ねえ、ところで、レイアちゃんのお花はどこにあるの?」
「……え?」
言葉を重ねようとした瞬間、それを遮るように告げられたエマさんの問い掛けに、思わず硬直する。花の庭に居る皆の姿は大分見慣れて来たが、自分にも生えている可能性は考えていなかった。カップを持つ手が小さく震える。
「え、と……花って、全員生えてるものなんですか?」
「ここに来るなら、普通はそうね」
自分の身体に何かが寄生して咲く。想像するとぞわりとした。見た目は綺麗な花でも、未知の存在が根を張るなんて恐怖でしかない。
「……あらいけない。そろそろ夜ね。戻りましょうか」
「え?」
「明るくなったらお茶会と日光浴、夜は各々部屋で休むの」
状況に追い付けないまま、皆もお茶会の片付けを始め、残りの紅茶や花弁を口に詰め込んでいた。そうしている間に、次第に空が暗くなって来る。
「あの、部屋って?」
「寝ていた温室が、レイアちゃんのお部屋よ」
エマさんは言いながら指先を遠くへ向ける。その先には、出て来る時には気付かなかった、たくさんの小さな温室が一面に犇めいていた。
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