「玉くんは、壱さんとどうやって知り合ったんだい?」
バルコニーで日向ぼっこする大家の隣で、たぬきの姿で足を広げて座った玉は、大家にもらったカップアイスを食べていた。
「俺はな、生まれてすぐに家族に捨てられたんだ。たぬきのあやかしとして、俺は異端だったらしい。それから独りで、木の実や草を食べて生きてきた。でも食べ物がなかった冬、行き倒れていたとこを壱が拾ってくれたんだ」
「ほお。じゃあ壱さんは命の恩人か」
「そうだ。壱と舞弥は俺の命の恩人だ。だからふたりとも幸せになってほしい」
「玉くんはいい子だね。玉くんも必ず、幸せになるとじいちゃんは思うよ」
「俺はもう幸せだ。壱と舞弥がいて、じーちゃんまでいるんだからな」
にぱっと笑った玉の頭を、大家は優しく撫でた。
「可愛い彼女さんとかできちゃうかもね」
「か、か、かのじょとかっ、俺にはまだまだ早いぞ、じーちゃん」
「そうかな~? 玉くん、彼女さんにデレデレになりそうだよ~?」
「じ、じーちゃんも冗談がすきだなっ」
「ふっふっふ」
好々爺と笑う大家と、美味しそうにカップアイスを頬張る玉。
ここにもまた、家族の形があった。
END.