お揃い

「榊、その指につけているものは、美也嬢と揃いのような気がするんだが……」

「ああ。ペアリングというものだ。結婚指輪の前段階のようなものらしい」

「結婚指輪……」




「舞弥、ひとつ相談があるんだが」

「なに?」

―――――



「ただいまー、玉いる?」

「おう? どうした?」

「あのね、今日壱とペアリング見に行ったんだ」

「おお! 恋人のあかしというやつだな。いいのあったか?」

「うん! 決めてきたよ。それでね、これにしたんだ。玉、人の姿になって右手出してくれる?」

「おう?」

人の姿になった玉の手を、舞弥を取った。

そして、壱が取り出しなにかを玉の指に通す。

「え……ゆびわ? なんで俺?」

「これね、ファミリーリングなんだ。ペアリングが恋人の証であるように、これは家族の証」

「え……」

じゃん、と自分たちの右手も見せる舞弥と壱。

その薬指には、玉の右手にはまっているのと同じ、細めでシンプルな指輪が光っている。

「もちろんね? ペアリングも見たんだよ。でもそれよりも、私も壱もこっちがいいなって思っちゃって……あ、結婚指輪は準備しようってことなんだけど、今は……玉と、壱と、私の三人でこの指輪つけたいなー……なんて思って。……ちょっと重かったかな?」

「……いち……まいや……う、うわーん!」

「ぎょ、玉? どうしたのっ」

「だって……家族って……俺のことも、入れてくれるのか……?」

「当たりまえだよ。玉は大事な家族だよ」

「そうだ、今更反抗期なんて起こすなよ?」

「お、俺、壱と舞弥の子どもの世話とか、めっちゃする。めっちゃ面倒みるっ」

「頼もしいお兄ちゃんだ。玉も、一人で出て行くなんてしないでね? 淋しいから」

「し、しない~っ」

わんわん泣く玉の頭を撫でる壱と、苦笑しながら見上げる舞弥。

――玉のずっとほしかったものは、いつの間にか手の中にあった。

大事にしよう。やっとたどり着いた、大事なひとたち。

「壱~、私まで泣けてきちゃった~」

「はいはい、二人とも」

壱が、舞弥と玉の頭を抱き寄せて、自分の胸を貸した。

いつの間にかなくせない存在になっていたお互い。

命ある限り、いや、最期の時を超えても……大切にしようと誓った。