「舞弥、今日バイトは?」
「ないよー。でも用事あって真っすぐ帰らなきゃなんだ」
「そっか。じゃあまたねー」
「うん、ばいばいー」
舞弥が学校で友人に手を振って別れた。――ところへ。
「舞弥!」
名前を呼んだその声は、舞弥が待ち望んでいたもので。
振り返った舞弥が見たのは、ひとの姿をとった愛しいあやかし――。
「……壱……!」
舞弥が駆け寄ると、壱はその勢いのまま舞弥を抱き上げた。ぼろぼろと涙をこぼす舞弥を、壱は目を細めて見つめ返す。
「待ったよ、私……!」
「ああ、待たせてすまない、舞弥」
「も、もうあとは、一緒にいられるんだよね?」
「もちろんだ。舞弥、――――」
……腕に抱きしめた舞弥の耳元に、壱は約束をささやいた。