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「……なあ舞弥、混乱してるのはわかったけど、俺を被るのはやめてくんねえ?」
近くの公園の物陰に隠れた舞弥は、玉を頭に被って気持ちを落ち着けようとしていた。
「だっ、なっ、あっ!?」
「うん、俺が悪かった。落ち着くまで待つからさ」
小さなあやかしたちと遊んでいた玉は、舞弥がどうしてこんな状態になっているのかよくわからない。
だが、あの場所から逃げたことから壱が原因だろうなあ、とは思っていた。
「舞弥、話せることがあったら言ってみろ? 聞くくらいは出来るからよ」
舞弥の右手に両手、舞弥の左手に後ろ足を握られて、頭に乗っている玉が言う。
舞弥は一度大きく息を吸った。
「……玉は知ってた? 壱の……呪いを解く条件ってやつ……」
「俺、壱が呪われてことも知んなかったんだぜ。なんか不都合な条件だったのか?」
玉の目は平坦になっているが、舞弥には見えていない。
「……不都合っていうか……いや、美也ちゃんが私をからかうために嘘をつ……くような子じゃない! それに壱もなんか照れてたし……っぴゃー!!!!」
「おいおい舞弥、よくわからんが、こんなとこで奇声あげると通報されるぞ。たぬき持ってるだけでも通報されっかもしんねえぞ?」
「だって落ち着いてられる!? 私、心から壱のこと愛してるんだってよ!?」
舞弥がキレ気味に言うと、玉からは「へ?」という声が。
「何ギレだ舞弥……。うん、そう言われて驚かないくらいにはお前ら仲いいよ」
「肯定された!」
ずーんと、舞弥の肩が下がる。
「え、落ち込むの? 嫌なこと言われた感じだったか?」
「落ち込むって言うか……そんなの自分で気づきたいじゃん。ちゃんと告白だってしたいし。……『好き』って特別なことじゃん。なのに私それどころか『愛してる』なんて感情に自覚もせずに……壱に申し訳ない。壱はわかってたことだろうから、悩ませちゃったかもしれない……」
「えーと、そう指摘されたわけだ。そんで、舞弥は『そんなこと思ってない』とか、そういう意見に達したのか?」
「……ううん。壱に対しても気持ちの名前を『これだよ』、って言われたら、『それだ!』ってなったの……」
「? じゃあいーじゃねーか」
「よくないよ! 初恋だもん、自分で気づきたかったってとこが後悔ポイントなの!」
「あー、すまん、俺赤ちゃんだから人間のおなごの機微とかわからんくて……」
「ううん……なんか誘拐しちゃってごめんね、玉も楽しく遊んでたのに……」