「だって私には神様であることより、美也ちゃんの彼氏であることの方が重要なんだもん」

そういうもんか? と玉が首を傾げると、壱が話に乗ってきた。

「じゃあ俺も、榊を『美也嬢の彼氏』と呼ぶことにしよう」

「……ちょっと照れる」

榊は軽く視線を逸らす。

「壱翁様まで乗らないでください! 私の方が恥ずかしいですよっ」

美也以外の方向性が一致してしまった。

美也は顔を真っ赤にしている。

「なー、お前子どもか?」

「まだまだちびだな」

話しているうちに、小さなあやかしたちが舞弥の足元に寄ってきて玉を見てきた。

「た、確かに俺は先輩方には遠く及ばない子どもですが、変化(へんげ)くらいは出来るあやかしですっ」

玉が負けじと言うと、小さなあやかしたちは質問を重ねた。

「ちび、名前はあるか?」

「玉です」

「かっこいい名前だな! 俺たちに名前はない。榊様がつけてくれなかったからな」

「なー。自分は名前があるのにな」

「開斗(かいと)と帯天(たいてん)しか名前はない」

「玉、遊ぶぞ!」

「え? うわっ」

小さなあやかしがひょいと腕を動かすと、舞弥の腕にだかれていた玉の体がふわっと宙に浮き、その腕を小さなあやかしが掴んだ。

「わ、わ、わっ!?」

「まずは鬼事(おにごと)だ!」

「次は隠れ鬼な!」

「は、はいっ」

あっという間に玉が連れていかれてしまった。

「玉、大丈夫かな?」

舞弥は心配になるが、壱が柔らかく笑んでみせた。

「大丈夫だ。本当に遊ぶだけだから」

「鬼事ってなに? 遊びなの? 怖いことじゃないの?」

「『鬼事』は鬼ごっこで、『隠れ鬼』はかくれんぼうのことだ」

「そういう風に言うんだ」

へえ、と納得していると、

「ねえねえ舞弥ちゃん、いつから壱翁様と付き合ってるの?」

美也にこそっと訊かれて、舞弥は思考停止した。