「玉、その人壱だよ」

「何言ってる舞弥!」

「俺だよ、玉」

壱はちょっと悲しい気持ちになりながら名乗った。

変化した姿は初めて見せるけど、ここまで認識されないとは……。

玉はギラっと睨んでくる。

「だから誰だてめえ! なんかキラキラしやがって! 王子様タイプかコラアア!」

玉が謎ギレを始めた。

舞弥が壱にたぬきに戻ったら? と言うと、そうだな、とうなずきたぬきの姿に変化する。

すっと、玉の勢いが引いた。

「え……壱、人間になれたの?」

「呪いが解けたからな」

情けないことだから今まで玉に言ったことはなかったけれど、そのツケがこの仕打ちとは……もっと早くに伝えておくべきだったと壱は後悔した。

「呪われてたの!? 俺知らないんだけど!」

「呪われたのがお前を拾うずっと前だからな」

「いつだよ!」

「……千五百年くらい前?」

「お前そんな生きてんの!? ぎゃー! 俺の知ってる壱はいなくなっちまったー!」

「……なんかあらぬ誤解を生みそうだからその言い方はやめろ。呪いが解けたからと言って何か変わるわけでもない」

「変わるじゃん! 壱、出て行っちまうかもじゃん!」

玉が焦った様子で吠えた。

いなくなってしまうんじゃないか――その不安がわかる舞弥は、玉の頭を優しく撫でた。

「玉、それについては大丈夫」

「へ?」

くるっと首を回して玉が舞弥を見上げてきた。

「壱がね、言ってくれたんだよ。玉と、ずっとここにいたいって。玉、壱がいつひとりでいなくなるか不安だったんでしょ? その心配はないみたい」

「………~~~~っ、本当か!? 舞弥と俺と三人で暮らしていけるのか!?」

興奮した玉が、腕をはたはたさせて壱に問う。

「ああ。そのつもりだ」

「う、う、うわー! 舞弥~、ありがとう~、まじで舞弥は俺の恩人だ~」

玉が嬉々と小躍りするので、舞弥はにこにこしてしまう。

その一方で――一人感情の整理をつけられない壱がいた。