「今休憩時間じゃないよね? サボり?」

「「し、仕事に戻りまーす!」」

「さっさと戻る。あ、舞弥ちゃん、玉くん明日から入ってもらうことになったから、指導担当任せていい?」

店長のその言葉に、舞弥は顔を明るくさせる。

「はい! もちろんです! ありがとうございます!」

「こっちこそ、紹介してくれてありがとう。じゃあ今日もきびきびよろしく」

「はい!」

玉が採用だったことが嬉しかった舞弥は、気分良く仕事に戻った。

「……にしても、舞弥ちゃんと玉くん、住所が一緒なんだよねえ……一緒に住んでる?」

店長はひとつの疑問を持ってしまった。



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「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

出迎えた店員に頬を染める女性二人組の客。

玉は新人ゆえのミスはあったが、おおむね順調にバイトをこなしていた。

最初は舞弥と同じ夕勤枠だったが、仕事を覚えてきてからは昼勤にも入ることになった。

毎日ではないので、昼間は舞弥の学校へ同行することもある。

「玉の仕事能力すごいんだけど、人間の仕事したことあるの?」

舞弥はひとりの休憩時間中に、カバンにくっついたマスコット型の壱と話していた。

「それはないと思うが、人間をずっと見てきたから、見て知っていることが多いのだと思う」

「へー。そういや壱と玉って家族……ではないんだよね?」

「玉が倒れているところを俺がたまたま助けて、それ以来つるんでいる感じだ。三十年くらい前に」

「私生まれてない。それなのに玉って、まだ扱いが赤ちゃんなの?」

「あやかしは長命がほとんどだからな」

再び、へーと答えながら水筒で持ってきていた麦茶を飲む。

家計がカツカツではないが、倹約は趣味の勢いの舞弥だった。

「あと、さ……」

舞弥は言いにくいことだが、訊いておかねばと思って口を開いた。

「なんだ?」

「この前の夜、壱が会っていたのって美也ちゃんの彼氏さん……だよね? 龍神様だっていう」