「あなたは神を信じますか?」

その女性は引っ越してから毎日のようにそう言って家を訪ねてくる。

来る日も来る日もやってきては追い返しているのだがついに僕の方が折れてしまい家にあげることになった。

リビングの椅子に座らせてお茶を出してから彼女の話を聞いてみると思っていた聖典がとか幸せがどうこうという話では無さそうだ。

「どうしてあなたは神を信じているのですか?」

私は以前から不思議に思っていたことを聞いてみた。

この人に限らず、何かを信仰するという気持ちが自分にはあまり分からなかったのだ。

「実は私も神がいると思っているわけではありません」

予想外の返事にお茶を飲もうとしていた手が止まる。

「……ただ、居ないと困るのです」

「それは……どういうことですか?」

それから彼女は自分の境遇について話してくれたがそれから僕は言葉を出すことが出来なかった。

「私には息子がいたのです。可愛い、もう少しで10歳になろうとしている子です。ただ、あの子が10歳の誕生日を迎えることは出来ませんでした。持病で死んだのです。学校にも行けない苦しい日々の中、あの子は死ぬ前まで必死に自分の無事を神に祈ってました。きっとなんの神に祈っているかもわかっていなかったでしょう。夫も息子の死を機に心を病み、自殺しました。遺書には『私は地獄でも何でも受け入れます。だから神様、あの子だけはどうか天国へ行かしてあげてください。あの子は何も悪くないんです。』と」

「私はもう神を信じるしかないんです。神がいないというのであれば、あまりにも彼らが救われない」