「私が死んだら世界で一番いい景色が見える場所に墓を立てて欲しいの」

同棲を初めて間もない僕の彼女は言った。

昔から変わっている人だなと思っていたけど今回のはその時の僕はいくら考えても答えが出なかった。

彼女が日本の絶景スポットとか花畑の中とか、そんなものにあまり興味がないのは知っている。

かと言って僕らの思い出の場所にも墓を建てれそうな場所なんて存在しなかったから。

「一番いい景色ってどこのこと？」

「君はどう思う？」

「……花畑の中とか？」

「ハハッ。確かにいい景色だけど私がそんなものに興味があると思うかい？」

「そうだよね……」

「まぁ、君にもそのうち分かるよ」

分からずしまいで頭を抱えていると彼女は僕の方にポンっと手を置いた。

────そんなことを思い出していた。

「パパ〜どうしたの？」

「ううん。なんでもないよ」

娘の頭を撫でると嬉しそうに笑った後タタっと部屋の窓の方に駆け寄って行った。

あの時の彼女。僕の妻はこの子を産んだ時に亡くなった。

そして、あの時の話。

彼女の墓は彼女の意向通り僕が場所を決めて建てた。

世界一番いい景色の見える場所。

世界で一番いい景色とは……

「ママ！今日はね。パパとハンバーグつくったよ」

「今日もママに話しかけてるの？」

「うん。だってママはあそこのお山からずっと私たちを見守ってくれてるんでしょ！」