「僕には君以外にも大好きな人がいたんだ」

助手席にいる最愛の彼女はこの話をすることが今回のドライブの目的だと気づいたようだ。

「ねぇ、その人の話教えてよ。私その話ずっと聞きたかったの」

そうだね。なら、話そうか。

僕は昔話を始めた。

「彼女とは高校生の時に会ってそこから数年間付き合って同棲して結婚した」

彼女はそれを黙って聞いていた。

「もう、その彼女はこの世には居ないけど最期にこんなことを言ったんだ」

『私の死ぬこの日を悲惨な日にして欲しくない。あなたにはその日を祝福すべきだと思っていて欲しい。だって……』

「私たちの子供がこの世に生まれ落ちた日なのだから。って」

車は妻と最後のデートで行った海岸沿いを走っている。

「だから、君はこの日を憎まなくていいんだよ。今日は君の誕生日で、祝福されるべき日なんだ」

それが君のお母さんの遺言だよ。

「…うん。うん……。」

君はずっとこの日のことを恨んで、自分のことを憎んできたかもしれないけど、君のお母さんはそんなことおもってなんかいない。

「誕生日おめでとう。本当に生まれてきてくれてありがとう」

隣に居る娘は涙を流し、しばらく泣き止むことはなかった。