僕の担当している患者は多数いるけど特に印象に残るのは小学生低学年のある女の子。

彼女はずっとアイドルになることが夢なんだそう。

あまり病院に来られないご両親の代わりにまだ新人の僕がよく病室に行き話し相手になっていた。

でも、あの子は運の悪い子だった。

あの子が患ってしまった病気は世界的にも例が少なく治療法が確立していない。

治る目処も確信もない中、彼女は今日も夢を語った。

「せんせいは私がアイドルになってライブを開いたら見に来てくれる?」

「もちろん。最前列で手を振るよ」

「そっか。じゃあ、1番前の席をせんせいのために取っといてあげるよ」

約束だよ。ぜったいに来てね。

うん。約束。

そう返事したが僕は彼女との約束を守れそうにない。

ある日、彼女の容態が急変した。

ベテランの先生が駆けつけた頃にはもう手遅れだった。

手術をするしない以前に、もう、彼女は助からない。

ここにいる皆がそれに気づいていた。

不運なことに彼女の容態が急変であったため彼女の両親は彼女の最期に間に合わないと聞いた。

つくづく不運な子だ。
……本当に運の悪い子。

「せんせぇ……」

か細い声が僕を呼んだ。

「……どうしたの?」

できる限りの優しい声を。

安心させてあげるためにいつものトーンで。

「せんせぇ……みてる?……」

その言葉を聞いて気づいた。

彼女は今、きっと夢を叶えているのだと。

彼女の細い手を力いっぱいに握りしめた。

「見てるよ……見てる……約束したもんなぁ……」

人が最期まで残っているのは聴覚だという。

私はそれを知っていてずっとずっと彼女に呼びかけた。

その声が聞こえたかは分からないけど、彼女の最後の顔は安らかだった。