私たち人間は声を一番最初に忘れるらしいです。

だから、私はあなたとの電話をこっそり録音していました。

今ではしていてよかったなと思っています。

まるで、今は会えないだけで電話越しにあなたが私に喋りかけてくれているように聞こえるから。
毎日、それを枕を濡らしながら聞いています。

ちなみにあなたの顔も忘れないようにずっと待ち受け画面は笑顔のあなたです。

次に忘れるのは匂いらしいです。

あなたのつけていた香水をつけてみましたがいい匂いがするだけであなたの匂いではない気がしました。

柔軟剤を同じものにしました。

でも、やはりあなたの匂いには近づけられなかったです。

でも、あなたがずっと使っていたバッグを開けると今でもあなたの匂いがします。

ふわっと香ってくるだけで顔を突っ込んで回でいる訳ではありませんからね?

そして、最後に忘れるのが味覚だそうです。

あなたが事故に遭う前に作りってくれていたお味噌汁を大切に少しずつ飲んでいます。

忘れないうちにあなたの味を再現するのは料理をする度に指に絆創膏を巻いてあなたに心配されていた私には難しいでしょうから、少しずつ、決して忘れないように、身に刻みつけるように食べています。

それでも、日に日に鍋から量の減っていくお味噌汁を見て私はずっと絶望に近い心配をしています。

あなたを決して忘れたくないのです。

だから、早く帰ってきて私に声を聞かせて欲しいのです。

「ただいま」と言って欲しい。

私のことを抱きしめて欲しい。

あなたの美味しいご飯を食べたい。
頑張るから今度は一緒に作りたい。

もっともっと私にあなたを教えて欲しかった。