「俺の友達にアイドルがいるんだけどさぁ〜」
俺はある日、酒の勢いでうっかり口を滑らしたことがあった。
俺とその話の男性アイドルは昔からの親友だった。
そいつは昔こそデブだったものの、俺と協力してダイエットを成功させ今では誰もが振り返る世紀のイケメンである。
そして、俺はその事も言ってしまった。
まるでそいつの成功は俺のおかげのように。
今のあいつがいるのは俺のおかげなんだと言うように。
正直、こんなことを言ったのは俺があいつに引け目を感じていたからなのかもしれない。
『もう、俺はあいつの隣には立てないんだ』
そう思っていたから、少しでも俺をかっこよく見せようと。あいつの隣に立つにふさわしい奴だと見せたかったのかもしれない。
そのことを言うのは秘密だって約束していたくせに。
俺は今、親友の葬式に来ている。
そう。あいつのだ。
話の続きだ。
その後、俺の話はあっという間にSNSに流れ、卒アルに住所に、色々なことが特定されトレンドにも入った。
それ以降、あいつのSNSのアカウントや事務所には大量のアンチのメッセージが届くようになった。
『整形したのはいつだ』とか『裏切りやがって』とか。
それだけにとどまらずついにはあいつの自宅までそれが届くようになった。
あいつはそれ以降引きこもるようになり、ついにはストーカー被害にあっていたようだ。
そして今。
あいつは自殺した。
この世に絶望と悔恨を残して。
葬式が終わって俺はあいつのご両親に挨拶を済ませ、遺品整理に同行させていただくことになった。
あいつの部屋は俺の住むボロアパートとは天と地の差のある立派なマンションの高層階。
エレベーターに乗っている間、俺は色々なことを考えてた。
もし、俺があの飲み会に行かなかったら。
もし、俺があの時酒を飲んでいなかったら。
もし……俺のエゴのためなんかにあいつとの約束を破らなければ。
その後悔は止まることはなかった。
エレベーターが音を鳴らして止まり、あいつの部屋へと入っていく。
それからの俺は後悔や悲しさで涙が止まらなかった。
あいつは俺との思い出のものを全部大事にとっていたのだ。
そして、あいつのご両親から俺に持っていて欲しいと日記帳を渡された。
そこには仕事の内容とか反省とか。子供が応援してくれて嬉しかったとか些細なことが沢山書かれていたが後半になるにつれて暗くなるなる話題に俺は耐えられなかった。
でも、俺に目を背ける権利なんてない。
だけど、あいつがこの世にいた最後の日。
死ぬ直前に書いた日記に俺は膝から崩れ落ちた。
『この世に後悔は山ほどある。けど、最も心残りなのは来月にあるあいつとの久しぶりの飲み会に行けれないことである』