父の命が危ない状況らしい。
正直、私自身父のことをよく知らない。
ずっと入院していて家で会うことがほとんどないから。
小学生の頃はよく会っていたそうだがそれも低学年の話で、高校生になった今、勉強に追われますます会う頻度は少なくなっている。
「あなた!だめ!わたしを置いていかないで!」
お母さんは必死で父をこの世につなぎとめようとしているが既に医者からもう無理だと言われた後である。
父に情が無い訳では無いがこんな様子のお母さんを見ていると涙が移りそうだ。
「………!?だめ!まだ生きて!」
父の体から次第に力が抜けていくのを見ている私でも感じた。
父はお母さんの後ろに立つ私をしっかりと見て
「お父さんらしいことなんもできなくてごめんな……」
と、言った。
「ううん。ありがとう」
この言葉に偽りはない。
父は私にこっちに来るよう目で訴えかけ、お母さんと私の手を握りながらこの世を去った。